約 2,264,072 件
https://w.atwiki.jp/alicecode12/pages/60.html
第3章 みんなトリガーハッピー 秘密工場包囲突破制圧戦 コードネーム『マス・プロダクション』、『資本企業』での制式名称『アイリス』。 それが今回問題となっているオブジェクトであった。前回の戦いで得られた資料を解読していくと これまた資本企業に属するどこぞの企業が新型のオブジェクトを建造中だと言うことがわかった。 「今回の件を説明すると、珍しく真っ正面からの情報戦に『資本企業』が『情報同盟』を上回った形みたいね。『情報同盟』の諜報部隊が用意していたダミーカンパニーが逆に『資本企業』の調査会社、つまりカウンター諜報部隊に取り込まれてしまった。『資本企業』らしく、お金で縛り付ける形で」 「なんて言うか、珍しく本当に間抜けな話ですね」 水着のフローレイティアさんがサングラスを付けてビーチベッドに寝そべり、状況を説明していく。 「敵は『資本企業』に所属する民間宇宙開発を標榜するベンチャー企業。『プライベートオブジェクト』。例の宇宙馬鹿がやってた毎号なんとかオブジェクトの発売元よ。そこが厄介なオブジェクトを建造している。出来ればこれを破壊、もしくは鹵獲したいってわけ」 「なるほど俺たちに何をさせたいのかなんとなくわかりましたけど……なんか思いっきしバカンス気分ですけど大丈夫です?」 ジャガイモたちが珍しく日光浴や海水浴を楽しんでいる。女性兵士たちがナンパ遠征に出ようとする馬鹿どもを鉄拳制裁する中で クウェンサーは何故こんなことをしているんだろうと疑問をぶつけてしまう。 「今ウチの電子シュミレート部門が全力で修羅場ってるのよ。だから私たちは鋭気を養いましょうって事」 「いいのかな? こんな事してて……」 やっぱりこんな事している場合じゃ無かった。 『てきのかずが……おおい!』 「嘘だろ……? この数。本当に本当に、全部オブジェクトなのか!?」 その数、30機。それが今回出てきたオブジェクトの数だった。 およそ3時間前。 「ふざけんじゃねえ! 爆乳! 今すぐ拒否しろ!」 『貴族』ヘイヴィア=ウィンチェル上等兵に上官であるフローレイティア=カピストラーノ少佐が下した新しい指示はお偉いさんの接待。それも最前線でドンパチしながら相手しろと言うもの。 「私だって拒絶したいのは同じ。でも相手は王族の関係者よ。例のモローク家直系一族のハウス・スチュワード…… つまりは、超上級使用人。全権とまでは行かないけど下手な王族より一族当主……つまりは玉座に近い存在よ」 「それでも結局使用人だろ! 本人が慰問にくるってならまだ意味があるのはわかるが、全く違うぞ!?」 「知らないわよ! そもそも慰問じゃなくて、何かしらの確認のために視察したいって話! 全く上は何を考えているんだが」 『貴族』ならヘイヴィアだけしかいないわけでは無い。目の前のフローレイティア少佐も同様に貴族だ。けれど……。 「私は特殊な立ち位置だからね。指揮官としての挨拶とかはするけどそれ以上の事は関与したくないし、下手にやれば 面倒な事になる。王族のお手つきなんて話がでっち上げられたらもうどうしようも無くなってしまうからね」 「けっ……わかりましたよ。やればいいんだろ。で……そのスーパーなバトラーさん、名前は?」 「それが……向こうの希望で自分は今日、この場にはいなかった。いたのは民間の従軍カメラマンのハウス・スチュワード氏と言う事にしてくれとね」 「おいおい……役職名をそのまま個人名にして、結局ばれるだろ。モナーク王族の関係者だってのは俺ら知ってる訳だから」 「そうね……だから、期待しているわ。私の部下が賢明な判断が出来るって事を」 そして、2時間前。謎の戦場カメラマン、ハウス・スチュワード氏が明らかにカメラでは無い装備品を片手に堂々と戦場を歩く姿にクウェンサーたちは目を見張る。 礼服のフロッグコートをぴっちりと着こなし、真っ黒のサングラスを身につけた長身の黒人。 両手に『正統王国軍』のサブマシンガンを2丁持ち歩くその老人男性は何というか、場違い感とステゴロの強者を兼ね備えた雰囲気である。 SHIMAGUNIのコミックとかに描かれるようなスーパーバトル爺さんと言ったその礼服サングラス老黒人、ハウス・スチュワード氏はジャガイモ達の前に立ち止まり一言。 「急なご用件で失礼を。私、民間の戦場カメラマン、ハウス・スチュワードという物です。此度は受け入れてくださって大変感謝しております」 「……あんた本当にそのカバーストーリーがいけると思ってんのか?」 ヘイヴィアもさすがに自称カメラマンが礼服両手二丁サブマシンガンという出で立ちには頭を抱えながら応じるしか無い。 「こちらといたしましても急なご用件で、無理を言ってしまったことは自覚しております。後日その辺の適切な謝礼をさせて頂きます」 「……せめて、何が目的か、話せる範囲で話してくれよ……」 「ふむ……無理を言ってしまった事は確かですし、良いでしょう。あくまでも話せる範囲で。始まりは、姫殿下の死に悲しんだとある方が、せめてと……ある技術に救いを求めた事が発端でしょう。 それ自体は恐らくすべての親御さんが一度は願うことでしょう。1度で良いので死者と話したい。それが自分の子供ならなおのこと。醜悪な詐欺師どもにつけ込まれるまでは」 「……死者との対話? 死者蘇生とかそんなぶっ飛んだSFファンタジーを本気で願ったって言うのか?」 クウェンサーが思わず会話に加わる。 死者蘇生、或いは死んだ人間ともう一度話す。それは古代から人間達が望んだ夢だ。けれど、実際問題そんなこと出来る訳が無いのだ。 数千年、下手すれば数万年の人類の夢物語でしか無い。 「ええ、その通り。死者本人と会うことは出来ない。降霊術に希望を見いだす人はいるでしょうが、実際問題降霊術が本物である確証は数百年にわたって一つも提示出来ない。ですがね、一つだけ、死んだ人間とお話をする方法はあるのですよ。厳密には死者本人では無いのですが……」 そこでいったん言葉はとまり、ハウス・スチュワード氏は周囲を見渡す。 「皆様は『デジタル・クローン』という言葉をご存じですか?」 そして、マス・プロダクションことアイリスの秘密工場があるとされている人工の山林地帯に足を踏み入れる馬鹿2人と これまた部外者の2名のチーム。 すなわち、『マウストラップ』こと『リリアン』を操る差押人のエリート少女とハウス・スチュワード氏である。 「なぁ、エリートちゃん。まだ捕虜交換出来ないの?」 「にっていはきまった。1しゅうかんさき。そのあいだにでかせぎだ」 クウェンサーがエリートの少女と話をしながら歩み、ヘイヴィアは周囲を念入りに警戒する。 そんなヘイヴィアを尻目に堂々と胸を張ってまっすぐ突き進むハウス・スチュワード氏。 当然ヘイヴィアは頭を抱え、どう対応するべきかと悩み始める。 「これ俺は間違ってねえよな?」 「そうなんじゃ無い? ヘイヴィア。でもあの人どんどん突き進んでるよ」 「ああ! 待ってくれ! せめて敵の姿が無いか、確認しろォ! プライマリースクールの先公の気分だぜ」 オセアニアでも使用されていた緑地技術によって形成された森は風情だとか自然の持続可能性とやらでは無く まず効率を優先された単一種による森だ。ただし、現在は一面銀世界。 木々には雪が降り積もり、針葉樹の単一森林であるが故に、森の中なのに見晴らしが良くてまぶしい。 「そうだ。俺等は間違っていないんだ」 そこに礼服サングラスの黒人はほどよく目立つ。『正統王国軍』の防寒コート組が浮いてしまう程度には。 「やっぱこれ、俺等が間違っているのか……!?」 「違う、絶対俺等が正しいハズなんだ!」 当然これほどに目立つ存在を見忘れるはずが無い。ついに敵と思われるライフル弾が飛んできた。 防寒コート組に。 「やっぱこれ、俺等が間違っていたッ!?」 「いいからはんげきしろ! 最悪!」 ヘイヴィアがライフルの引き金を引いて応戦するその中、礼服サングラスの男が仁王立ちしながら敵へと 歩いて行く。何故か礼服男には飛んでこない弾丸。どうも敵側も戸惑っており、ひょっとして関係者か 新手の変態かと行動できないでいるようだ。 「お勤めご苦労様です! しかし、用件があり、本日は参りました! 一つ、聞きたいことがございます!! スポンサーのお一人、『殿下』の使者でございます!」 で、もって礼服男の大声に敵味方双方が銃撃を一度止める。 「何考えてんだあの使用人っ!?」 「でも敵が撃ってこなくなったぞ。どうなってんだ」 「責任者へのお目通りを願います! 『姫様』のサンプルの取り扱いについて! 契約違反らしき物を見ました。 そのことについてのご説明をいただきたい!!」 『姫様』。それはいつものジャガイモ達の『お姫様』の事では無く 『皆様は「デジタル・クローン」という言葉をご存じですか?』 『それは、人工知能……いわゆるAIが残されたあらゆるデータを元に個人の人格を再現すると言う物です。この人ならこのように考える。この人はこんな風に発言する。この人ならこの人ならこの人なら……』 『現在の技術力を使えば脳内にチップを搭載することも可能ですから、本人の視覚データや発言データもあれば、恐らく限りなく確実性が上がると考えられています』 『……ここでは「殿下」という単語でお許し願いたい。「殿下」の願いは「姫様」ともう一度会うこと。一族内のごたごたで大変負担をかけた事が『姫様』の死の原因だと悔いておられるのです』 「むろん、所詮機会が再現したしゃべるプログラムに過ぎません。それでも姫様ともう一度会いたい。話がしたい。それが「殿下」の願いなのです』 『そして、「デジタル・クローン」を手がける企業に最高峰の技術、技能、可能性をつぎ込み限りなく本物の 「姫様」の「デジタル・クローン」を資本企業のとある企業に依頼することになったのです。その企業の名前が「プライベート・オブジェクト」。個人がオブジェクトを所有できるようにする企業です。元々並のテクノロジーでは無いのですよ』 『始まりは、何でも個人が宇宙船を乗り回す時代を始めようとか言う野心あふれる人材が集まったことだったとか。宇宙船がいつしかオブジェクトになり、そのために各方面の技術を集め、技術開発集団となっていったのだそうです。もちろん最終目標は個人が宇宙用オブジェクトを乗り回す時代の到来。そのために肉体的な死の克服さえも考えていたそうで』 ハウス・スチュワード氏が大声を張り上げる。確実に聞こえるように。 「こちらが提供した『姫様』のサンプルの使用に契約違反の恐れがあるとの話を聞きました! 責任者のご説明をいただきたい!」 それが、ハウス・スチュワード氏の目的。 銃声はやんで、いつしか敵兵の姿が堂々と見えるようになる。そして、その中から1人の人物が現れる。 ビジネススーツの上に防弾チョッキとヘルメットをかぶり、ライフルを握るその男。ビジネススーツとビジネスシューズが風景に似合わない。 「それは大変失礼を。いささか物騒で鉛玉での歓迎となったしまった事をお詫びいたします。ただし、そちらの兵隊の皆様には出来ればご遠慮願いたい。ビジネスの話に銃口は不要なので」 そう言って自分のライフルを地面に置き、ヘルメットを脱ぐ。そして、ハウス・スチュワード氏にも武装解除するようにとジェスチャー。 「それは大変失礼を。いささか物騒で鉛玉での歓迎となったしまった事をお詫びいたします。ただし、そちらの兵隊の皆様には 出来ればご遠慮願いたい。ビジネスの話に銃口は不要なので」 そう言って自分のライフルを地面に置き、ヘルメットを脱ぐ。そして、ハウス・スチュワード氏にも武装解除するようにとジェスチャー。 「おい! 使用人! やめとけ! こいつ等に交渉なんて! そういう任務じゃ無いんだぞこっちは!?」 「申し訳ございませんが、『正統王国軍』の皆様はただちに帰って――――」 「――これで、彼らも入れてくれませんか? 入れられる場所まででかまいません。事が事ですので」 ハウス・スチュワード氏がドルの札束を出したことで空気が変わった。 「……アポイントメントは取っておられますか?」 「2時間前に今からそちらに行くと電話はしております。それ以上の事はわかりません。急ぎですので」 「わかりました。是非とも面会できるように私どもも全力を尽くしましょう」 『資本企業軍』の兵士たちが一斉に立ち上がり、花道を作って 「それでいいんかい!? 『資本企業』!?」 「くそっ、あぽとるだけであんなりんじぼーなすか。うらやましい」 「あー『資本企業』ってやっぱこんなノリなのね」 色々な意味で諦めた馬鹿2人であった。 案内された小部屋は監視塔内部の物だった。元々誰かが訪ねてくる予定が無かったので 外部から来た人を待たせる事が出来そうな部屋がここぐらいしか無かったのだろう。 札束で簡単に買収される兵隊と言ってもなんだかんだで最低限の仕事はする。 「武器の持ち込みはここまでとお願いします。その先は命の保証が出来ません。あちらのモニターに 営業担当と責任者が映りますので、現状ではこれ以上はご勘弁を。お話をするだけならこれで十分ですよね?」 有無を言わさない迫力。まぁ、確かに話をするだけならこれでいいだろう。そして 「一応念のために言っておきますが、アポイントメントを取ることが今回私どもが受注したお仕事であって あなた方を案内し、すべて見せることではございません。退去をお願いすることもありますので、そのときは即刻立ち去るように」 「そうはいきません。納得のいく話がされない場合は強行突破も考えてございます。一応そのときに備えておくことをおすすめしますよ」 無言の圧力を醸し出すビジネススーツに礼服グラサン男が立ち向かう。 もはや馬鹿2人とエリート少女は置物だ。 モニターに1人の女性が映る。営業担当だというその女性にハウス・スチュワード氏がなにやら色々と聞いているが その内容はほぼ次の通りだ。 『契約違反が起きたと聞いた。状況の確認がしたい。今すぐ説明を求める』 それに対して相手の答えはずーと同じだ。 『そのような事実は現時点では聞いていない。一応確認するが無い物と考えている。その上で騒動を残念に思う』 それで終わり。ハウス・スチュワード氏があらゆる湾曲した表現を多用し 『無いと言うのなら、何故今回の騒動が発生しているのかクライアント兼スポンサーに詳細を報告せよ』 と何度も聞くが答えは変わらない。 礼服サングラスの黒人男性という出で立ちのハウス・スチュワード氏が立ち上がる。 「では、実際に立ち入らせてください。私どもは現状に強い不信感を抱いています。少なくとも私がこの目で 現状を確認しない限りその返答では『殿下』は納得しないでしょう。このまま施設への立ち入りを認めてもらいたいですな」 『それは困ります。せめて数時間前にそのことをお伝えしていただけ無ければ……。軍機が関係する場所も多いので また後日お願いします』 「いえ。それを聞いて、強行突破の覚悟が出来ました。5分以内に返答が無ければそちらがなんと言おうと私は突入いたします」 『……それは困りましたね。では、警備の皆様、その人以外はどうでも良いので、その人を拘束してください。手足の1本は許容範囲で』 「「この流れは……」」 馬鹿2人の予感は的中した。と言うより、遅すぎた。 次の瞬間銃撃戦が始まったのだから。 ヘイヴィアとハウス・スチュワードがそれぞれライフルとサブマシンガンを引き金を引き、クウェンサーとエリート少女が地面に這いつくばって その場か逃げ出せないか、辺りを見ている。 「って、エリートなんだからなんか、すっごい戦闘技術で戦えるでしょ!」 「しゅうきょうばかとはちがうんだぞ! 最悪!」 『資本企業』特有の黄色いエリートスーツの上に『正統王国軍』の防寒コートという出で立ちが故に微妙なチラリズムを発揮しているが そんなこと考えてもいない少女が思いっきり焦ったように声をだす。 「しゅうきょうばかやせんもんのへいたいならいざしらず、えりーとがはくへいせんとくいなんてふつうじゃないからな!」 「「えっ?」」 「おまえたちのだいじなえりーとがはくへいせんしているいめーじあるの!? 最悪!」 言われてみればお姫様がライフル片手にヒャッハーしてるシーンは全く思い浮かばない。 プタナだったらヒャッハーは言わなくても遠慮無く引き金を引いてそうだが。 「言い分はわかった。でも真っ先に逃げるのは違うよな!?」 ヘイヴィアが叫び、エリート少女はすでに部屋の外。 「そもそもわたしは、ちをみるのがにがてなんだ!!」 「「えっ!?エリートだよね!?」」 「おまえたちのなかのえりーとのいめーじどうなってる!?そもそもわたしはえりーとでとりたてにんだ!さしおさえにんだ! かのうなかぎり、いきてつかまえるのがわたしのしごとだ!しんだらしたいいじょうのかちがないだろ!最悪!」 「おいおい……」 「マジかよ」 エリートなのに血を見るのが苦手、可能な限り生きたまま制圧と言う変わり種のエリート少女だったことにクウェンサーが驚き、ヘイヴィアがお荷物が増えたと小さな絶望を抱える中、ハウス・スチュワードのサブマシンガン二刀流が勝負を付ける。 右のサブマシンガンが弾切れ。すぐさま左のサブマシンガンで牽制しつつ、拳銃に持ち替えて敵兵をヘッドショット。 身を隠して、右のサブマシンガンのマガジンを交換。その間にも時折左のサブマシンガンで牽制。 よく見たら腕が2本増えてる。 「「すげぇ……」」 「AIせいぎょのほじょぎしか。あんなつかいかたがあるんだな」 「マガジン交換、或いは牽制にとりあえず弾丸をばらまきたい時に拳銃を持たせるなどしたら便利ですぞ」 『資本企業』兵はすでに戦死したか、うめき声を上げてるだけになっていた。 「若い頃はガンカタという物にあこがれてましてな。しかし上には上がいる。映画のようにスタイリッシュアクションで無双とは行きませんで、このような邪道に走りました。おかげで旦那様に護衛としての能力もまた高く評価されるように なったので痛し痒しでございます」 「スーパー使用人かよ。王族様は格がちげーわ」 「それはさておき、ここを移動しましょう。さすがに増援までは相手しきれません」 よく見たらスーツ武装男の姿が見えない。奴は奴で撤収しているようだ。ひょっとしたら増援とともにやってくるかもしれない。 『資本企業』軍の施設の小部屋と考えるとここに長居するのは悪いことだ。 ドアでは無く、窓をぶち破り、外から走る。先頭にいるのはヘイヴィア。最後尾は、実は戦闘力に疑問が付くらしいエリート少女。 クウェンサーはそんな強い連中の真ん中で周囲を見渡す。 オブジェクトの建造施設としては、不思議な場所だ。雪山で、緑化技術によって山林にされてる場所。 お金大好き『資本企業』にしてはいくら軍事施設だからといってなんだか不自然な場所だ。だってこんな場所を軍事施設として開発するのにお金がかかりそうだもの。 新型のオブジェクトの開発施設にしてもこんな場所じゃなくても良いはずだ。それともこの場所である理由でもあるのだろうか? そんな風に思っていたら、雪山の斜面に作られた奇妙なモニュメントのような構造物を見つけた。 「…………? マスドライバー……か?」 クウェンサーの知識の中にアレを説明できそうな物はそれしか無い。だが、仮にマスドライバーだとしてあまりにも 奇妙だ。アレでは人を乗せた宇宙船なんて打ち上げる事は出来ないだろう。 ただし……。 「おい! クウェンサーなんで立ち止まる!」 「……どこからエネルギーを手に入れている。仮にアレが本物だとして……」 「ごちゃごちゃ言ってないで、危ないからさっさと走れ!」 「待ってくれ! この施設、地下に伸びてるかもしれない!」 ロケット単体で宇宙に人や物を運ぼうとすると、できる限り赤道に近い方がいい。地球は丸い。おまけに重力を振り切る一番の方法は ある程度の高度まで進出した後、地球重力に従って落ちる事だ。うまいこと落ちると、地球に落ちずに地球の重力に引っ張られて 地球が丸いが故にさらなる高高度に猛スピードで突入することが出来る。こうやってロケットは宇宙に到達する。 なので、できる限り赤道に近い方がいい。赤道なら地球が丸いが故に安心して北でも南でも東でも西でも適当な場所に落ちるだけで良いからだ。 「でも、実は赤道じゃ無くても良かったりする。有名なバイコヌールとかは色々工夫して落っこちる形で地球から離脱するんだ。 その工夫がやりやすい経度って奴が南北それぞれにある。普段は世界的勢力の軍事衛星や防空レーダーなんかがこの軌道やこの軌道に何かを進入させやすい場所に変な物を立ててないか監視してるけど、ここはまさにそう言う場所に近いんだ!」 だから、こんな辺鄙な雪山。何かを宇宙に大量に投入したいのであればマスドライバーの動力源が必要だ。 おまけにオブジェクトの開発まで行ってるともなれば……表面から見える範囲だけですむ規模じゃ無い。 「最悪の場合、ここは第2の北欧禁猟区になるぞ! アースガルドみたいなJPlevelMHD動力炉をオブジェクトじゃ無くて施設中心に設置したちょっとした要塞都市であってもおかしくない! 宇宙空間に無数の衛星を打ち上げる研究都市だ!」 そして、轟音が轟く。マスドライバーらしきそれが稼働したようだった。尤もマスドライバーで何かを射出するわけでは無い。 マスドライバーに何かを乗せる搬入口に動きがあると言うだけだ。マスドライバーの搬入口付近が開く。 「おいでなすったぞ……」 「これはこれは……」 「リリアンのほうがかっこいいな」 「……オブジェクト!」 『資本企業』軍の新型機。噂の『マス・プロダクション』こと、『アイリス』。 「「「ん?」」」 1機出撃して、即座に2機目が姿を見せる。3機目が、4機目が、5機目が―――― 「――数がおかしくないか?」 ヘイヴィアの呆然とした感想がすべてを説明していた。 『正統王国軍』第37機動整備大隊の所属オブジェクト、ベイビーマグナムのエリート、ミリンダ=ブランティーニもさすがにこの事態には唖然としていた。その数30機。いくら何でも絶望的な差だ。 即座に白旗を上げても許されただろう。が、彼女はそれをしなかった。自分がそれを許せなかったから……。 「1ぱつも……うたずに……こうふくなんてさすがにいやだ……!」 そして、それは奇しくも 「カピストラーノ少佐!」 「1発も撃たずに白旗を上げるなんて許される立場な訳が無いだろ!」 「しかし、30機です! 無理です! 1対30なんてこの状況下で戦うのは無謀です。上もわかってくれますよ!」 「……お姫様! そっちの感覚でかまわない。1機だけで良いからやれる!?」 ミリンダからの返答は沈黙。フローレイティアさんとしても本当はわかっている。 オブジェクト戦にとって数は重要な要素だ。1対1なら勝てても2対1なら厳しいと言う事例は数多い。 30倍の数相手に戦って勝つなんてオブジェクトとエリートはさすがに存在しないのが現実だ。 「……お姫様。5分耐えて。その間になんとか出来そうならそうする。駄目なら白旗を送信する。と言うわけでおまえ達は急ぎ撤収の準備を!可能な限り100秒以内に全部終わらせろ!!」 「少佐! いくらなんでも!」 『わかった』 「お姫様!?」 ベイビーマグナムの表示の中に300秒のカウントが入る。死のカウントダウン。或いは命のカウントダウン。 ミリンダはそのままベイビーマグナムをアイリスたちの中に突っ込ませた。 最高速に到達、主砲の下位安定式プラズマ砲を辺り一面にばらまく。 (でてきたばかり、じんけいができてないいまなら、ふところにはいりこめる。どうしうちをさけるためにうてなくなる!せっきんせんをするしかない!) ベイビーマグナムは最高速度530キロに到達。この速度で1機のアイリスに突っ込みながら主砲のプラズマ砲をたたき込む。 その直後、1門を除く6門の主砲をこの状況では段数に不安のあるコイルガンで正面真下の地面を撃つ。 轟!! と衝撃波が空間を揺らし、反動と衝撃と慣性の法則がベイビーマグナムの進路をゆがめ、急カーブ。 (今――!) ――すれ違いざまにさらに1機にプラズマ砲をたたき込む。 (せめてちゅうはしてくれたら……ッ!) ベイビーマグナムの敵機の表示が変わる。 【エネミー24 撃破】 【エネミー06 大破】 「えっ……?」 直後、ベイビーマグナムに敵の砲弾がぶち当たった……。 『お姫様!?』 「だ、だいじょうぶ、フローレイティア。それより、こいつら、やわらかい!」 ベイビーマグナムは右旋回。敵機を接近戦で撃破したと言うことは皮肉にも敵機を肉壁として利用する事が出来なくなる。 つまり、同士討ちを気にせず、撃てる。遠慮無く敵のレールガンが次々とベイビーマグナムに向けて撃ってくる。 (よけられない――!) ――操縦桿を握った手を大きく動かす。ボタン操作やタッチパネルを高速で操作する。 FCSの自動計算による……――やってる暇なんて無い。 微調整。 もうカンで良い。 引き金を引いて、 レーザーの照射。 轟!! 空中で敵のレールガンの砲弾が爆発した。爆破の衝撃波が空間にとどろき渡る。 空中での砲弾迎撃。オブジェクトの主砲級レーザーによる対空攻撃の成功。ベイビーマグナム、損害軽微。 「……いける。のこり265びょう。いける」 お姫様が覚悟と自信を決める中、クウェンサー達もまた、数の暴力と戦っていた。 「ただのライフルで軍用パワードスーツ軍団と戦ってくださいなんて無茶を命令する爆乳もこの気持ちをいい加減味わってみろって!」 「むりむりむり。最悪。すたんぐれねーどかえんまくでたいしょふのうなてきはもうむり!」 「君いつもスタングレネード一本で戦ってきた口!?」 「なんでも良いのですが、サブマシンガン二刀流で相手するには厄介ですなぁ……」 『資本企業軍』の軍用パワードスーツ部隊のやたら口径のでかい専用ライフルに狙われ動けない。 50口径のアサルトライフルが放つ銃弾の威力は皆が隠れている壁を2発で粉々に砕いていく。 それでもそこにしか隠れ場所が無いのだから、だんだん押しくらまんじゅう状態。 「おとこどもはまえにでろ!おんなこどもをたてにするな!って、どこさわってるぅ!?最悪!」 「えっ、俺何処触ってるの?つか、もっとつめて、マジで余裕無い!」 「ふわっ!! ほんとうにやめろ、さわんな!!」 「こんな時でもラキスケ出来るとか余裕だなクウェンサー!」 切れ気味のヘイヴィアが手榴弾を投げる。爆発。お返しに大量の銃弾が帰ってきた。 「マジでなんもないの!? エリートって普通の人間より色々パワフルだったりするじゃん!」 「さいむしゃやよにげしたばかをつかまえるのとぐんようぱわーどすーつとたたかうのをいっしょにするな!ええい、もうわかった! むりょくかするほうほうにはこういうのもある!」 エリート少女は一瞬だけライフルを構えて再び隠れる。 「……よし。いける」 「何が!?」 「おまえたちは10びょうだけなにもしないであたまをさげてろ!」 そして、再びライフルを構えて引き金を引く。小さな爆発の衝撃。『資本企業軍』の軍用パワードスーツ1機大破。 「「えっ?」」 「おぇ……。やっぱちはきらいだ」 「なにしたんでしょうか?」 「ばってりーぱっくをらいふるぐれねーどでそげきした。わたしはしほんきぎょうのえりーとだぞ。じこくのそうびのきほんてきなとくちょうくらいわかる」 「なんでもいいぜ! やっぱエリートは頼りになるな! これからも頼むよ!」 手のひら返しのヘイヴィアに言いたいことがあるが、エリート少女はそれを無視する。血を見るのは嫌いだ。ましてや自分が原因になったものは気分が良くない。 とはいえ、エリートという因果な商売の自分がそれを言うのは偽善者っぽくてこれもまた好きでは無い。 (かちょうはいつもたよりなさそうなめでわたしをみていた。とうぜんだな) 『資本企業軍』の軍用パワードスーツ部隊はさすがに1機撃破されただけで止まらない。けれど戦い方がわかった 3人組は銃弾で、或いはハンドアックスで器用にバッテリーパックを狙う。ライフルグレネードは無くても数を重ねれば敵は一度身を引く。その隙に移動を繰り返す。 「で! クウェンサー、地下に行けばなんとかなりそうなのか!?」 「それはわからない!でもこの基地の本命は間違いなく地下だ!」 そして、4人は見つける。 「脳みそ……の工場?」 映画のような培養槽が並びそこに人間の脳みそを模したと思われる何かしらの肉塊がいくつも転がっていた……。 「おい、まさかにんげ――」 「――ではなさそうだよ。ヘイヴィア。これたぶんネズミだ。薬ななんかで無理矢理肥大化させてる」 「…………」 「……これはこれは」 エリート少女が1人沈黙し、ハウス・スチュワードが興味深そうに一つ一つを観察する。 そして、その中の一つにあるラベルを発見する。そのラベルを見たハウス・スチュワードが血相を抱えてなんとか脳みそのような何かをなんとかして取り出そうとする。 「おい! 何しているんだよ使用人!」 「姫様です。姫様の名前が印字されていて!」 「「えっ?」」 「…………はいぶりっとぷろせっさ……。なんでこんなもの……いまさら……しっぱいしたやつなのに」 「……何を知っているのです!? 教えてください!」 ハウス・スチュワードがエリート少女に詰め寄り、身長の違いからか、大男が小さな女の子を高圧的に接している絵面が出来上がる。 「でじたるくろーんのはなしをきいたときからおかしいとおもっていた。たしかにそれはきゅうせいきのころにてーしょうされて、じっさいにつくろうとしたけど、うまくいかなかったんだ。けっきょくえーあいがあたえられたあるごりずむにしたがってかいわっぽいことをするだけのしゃべるきかいでしかなかったから」 「そうか、結局アンジェリナ・リストの問題からは逃げられない。フレーム問題の一つも解決出来ないAIではいかにもそれっぽい言葉を並べるだけだ」 「……だけど、ふれーむもんだいってけっきょくきかいてきなちせいにはいざってときにもしもちょうこうしてしまったら、とりあえずこうする!ってこうどうができないっていみだ。ならさ、きかいてきなちせいじゃなくしればいいんだって」 それがハイブリッド・プロセッサ。生体組織と機械組織……一種のサイボーグ型の演算装置。 「でもあいであはよかったけど、しっぱいした。だって、きかいにできることはきかいにさせて、にんげんにできることはにんげんにさせることがいちばんこすぱがいい。わざわざはいぶりっどにしなきゃいけないひつようせいがないしせいぞうにじかんとかねがかかる」 そんなハイブリッド・プロセッサに目を付けた奴らがいた。ここの奴らだ。 単純なAIシステムではデジタル・クローンは失敗だった? なら生物と機械の両方の演算システムなら? 「たぶん、ねずみをつかっているのはそれがいちばんやすいから……」 「なんてこった。生命倫理って奴は何処に消えちまった? って言いたくなる惨状じゃねえかよ。まだネズミだから マシだけどさ、その理由がカネってところがおまえ達らしいぜ」 「で、なんでそれを君は知っているのさ?」 「かいしゃのこきゃくりすとのなかにはいぶりっどぷろせっさのけんきゅうしゃがのってた。わたしがつかまえたさいむしゃのなかにもひとりいたはず。最悪なんで、こんなところで」 「では、何故『姫様』の名前があるので? よく見れば一つ一つ全部に人の名前が付いてますぞ」 少女は部屋を見渡しながら……小さな声で 「……たぶん、ねずみだけじゃ、たりないんだ。ほんのうてきすぎる。にんげんののうさいぼうをまぜなきゃえんざんのやくにたたない――」 「――その通りだよ君」 直後聞こえた声に全員が反応し頭上の渡り廊下を見る。ヘイヴィアやスチュワードが銃口を向けるそこには 「そう言う物騒なものはやめてくれよ。普通に死んじゃうから」 何故かSMの女王様の格好に白衣を身にまとったお姉さんがいた。 『情報同盟軍』所属のオブジェクト、インビジブル014の乱入はお姫様が4機目のアイリスを撃破したところであった。 残り146秒カウントでの乱入。 『どこからやってきた!?』 『わかりません! お姫様を援護するために展開中の航空部隊の偵察にも痕跡はなく……』 「アクティブ・カニッツァ!」 お姫様はそれを知っていた。以前、警戒するべき敵性オブジェクトの定期講座で教えられたそれ。 事前の諜報活動によって判明した『情報同盟』における名称は『インビジブル014』。 未だ、世界は『光学迷彩』を完成させてはいない。けれど限りなくそれに近づいた機体。 『少佐ァ!? 敵軍に動きあり! まだ新たなオブジェクトを投入しようとしています!』 『何だと……!? 「マス・プロダクション」はいったい何機あるんだ!?』 しかし、戦場の混乱はまだ終わらない。 「お姫様!?」 地下で、唐突に謎の痴女白衣が手元の端末を操作したかと思うと地上の状況が画面に映った。 「あー『情報同盟』め……ちょっと、あいつらのクリエイト005とか言う機体を好きにしてただけなのにあんなに激おこで。 まぁ、スパイ活動も普通にさせてたけどさ。そっちの資料かな? まぁ、いいやちょうど良いからそちらの『正統王国』のオブジェクト共々アイリスのプレゼンテーション用の資料作成に付き合ってもらうよ」 「ふざけるな!? あんた誰だ!」 SMの女王様は鞭の代わりに端末を持っていた。その扇情的な体にやたらでかい胸をアピールするような姿の女性はクウェンサー達に対して意にも介さず、端末を口元に当てて 「アイリス・コンセプトモデルはこのように我々が当初考えていた究極のコストパフォーマンスに優れた『純規格品』オブジェクトとして、すでに完成と言って良いでしょう。しかし、あくまでもコンセプト・モデルであるが故にいささか改良の余地がある事は素直に認めなければなりません」 唐突に、記録もしくはプレゼンの予行演習が始まった。 「オブジェクトは職人芸によって製造されるオニオン装甲用の装甲板を何百と束ねる事でその防御能力を発揮し、JPlevelMHD動力炉のエネルギーによって数多の兵装システムを稼働させる事で莫大な火力を作り出すと言う事を基本とする大型機動兵器です。 従来、職人芸によるオニオン装甲と動力炉の価格の問題からオブジェクトは1機辺り約50億ドルが基本であると言われておりました。 我々はそこにメスを入れたのです」 身振り手振りを交え、時に大きく注目を浴びるように。もしかして、SMの女王様はそのためか? 「アイリスの基本はバイタルパート以外の職人芸を廃止。動力炉の価格問題は徹底的な量産効果による価格の低下。この2点により約50億ドルで最低3機は作れる事を目指した物です。現在のアイリス・コンセプトモデルの価格は約19億ドル。約50億ドルで3機ラインはぎりぎりで満たした……といささか強引ではありますが、主張できるのでは無いでしょうか? しかし、同時に問題があります」 地上には最初の30機も含めると60機のアイリス。それも新たに投入されたアイリスたちは明らかにそれまでのアイリスとは姿形が変わっていた。変わっていないのはカラーリングくらい。 「数を優先したせいで、このように第1世代相手に数の暴力で襲いかかっても瞬殺出来ないという点です。これではいくら安上がりな1機19億ドルでも積もり積もればオブジェクト1機が撃破されただけの損失となり、最後は勝利のコストパフォーマンスに大きな問題となるでしょう」 「そりゃそうだ。お姫様がこんなに頑張れるって事は俺たちが潰してきた機体よりも怖くないって事だ! わかったら――」 クウェンサーの大声の発言はすぐに、 「――ふふっ」 謎の痴女の冷笑でかき消された。 「それ故に、我々はアイリスにさらなる改良と多様性、そして戦術能力を目指すことにしました。カタログをご覧ください!」 その言葉とともに画面に無数の文字情報を表示される。 【アイリス・ローエンドVer.アタッカー】 【アイリス・ローエンドVer.ディフェンダー】 【アイリス・ローエンドVer.モビリティー】 【アイリス・ローエンドVer.スラッグ】 【アイリス・ハイエンドVer.インファントリィ】 【アイリス・ハイエンドVer.アーチャー】 【アイリス・ハイエンドVer.キャバリー】 【アイリス・ドラグーンVer.アウトレンジ】 【アイリス・ドラグーンVer.ミドルレンジ】 【アイリス・ドラグーンVer.クロスレンジ】 【アイリス・オーダーVer.リリアン】 【アイリス・オーダーVer.Project:I-チャイルド】 【アイリス・オーダーVer.フロイライン】 【アイリス・ウォーロードVer.クインビー】 【アイリス・ウォーロードVer.ウォーデン】 「は?」 「おまけに我々はさらなるコストカットの可能性を発見。すなわち、エリートのコストカットです」 彼女はその両腕を広げ、高らかに宣言する。 「ハイブリッド・プロセッサを活用した、デジタルクローン! これらを搭載することでエリートの搭乗そのものをオミット出来ます! 我々が提唱したいのは質のアイリスと数のアイリスによる『ハイローミックス戦略』であり、連携戦術による確実な敵オブジェクトの撃破、並びにその圧倒的な『軍勢』と呼ぶに値するアイリスたちが発揮するであろう抑止力による紛争抑制効果!」 プレゼン用に作ったであろう画像が次々と……まるでゲームのTVコマーシャルのように流れていく。 それらは次のような簡素な単語がでかいフォントでいかにも重要事項であると目に入ってきた。 『防御型アイリス』が防御し、『火力型アイリス』が攻撃、『機動型アイリス』が牽制と追撃を。 最後に『アイリス・クイーン』がアイリス達を率いてだめ押しの一撃必殺を。 最低15機のアイリスが、連携しオブジェクト50機の効力を発揮する事を願って。 エリートを乗せる必要性は無し。後方の安全な場所から基本戦術を入力し、それを基本方針として活動する ハイブリッド・プロセッサによるエリートのデジタルクローンを活用。安全にも配慮。 「これぞ! 我が社が提唱する究極のコストパフォーマンス追求型オブジェクト! 純規格品オブジェクト、アイリスです!」 「ちょっとまって! なんでりりあんのなまえがあるの!? 最悪!」 悲鳴のような声。エリート少女の食い入るような言葉。オブジェクトは通常専用のエリートを用意されている。 逆また言える。エリートは用意された専用のオブジェクトのみを操縦できる。 双方がそう言う風に作られている。にもかかわらず彼女が知らない所で『リリアン』の名前のオブジェクトの建造が進んでいる。 「りりあんはじしゃせいさんだ! おまえたちのよくわからないものじゃない!」 「そうはいっても受注生産の話が来てるんだもの。そっちの上司に聞きなさい。幸いにもまだ製造は開始されてないから今ならキャンセル料も安くてすむわよ」 「なっ……! そんな最悪、ばかな!?」 エリート少女の顔が真っ青になる。その額には大粒の汗が噴き出し、今にも泣きそうな顔を必死で食いしばって耐えている。 彼女のワンカールした髪の毛の数本がが汗で顔に張り付いて、まさに何かあった女の子という雰囲気を醸し出し、彼女の両手は強く握られている。 「さて、ここまでは兵器としてのアイリスの話をしました。ここからは未来の我々の最終目標としてのアイリスについて」 【アイリス・ラバーVer.シティシップ】 【アイリス・ラバーVer.コロニスト】 謎の機体が表示される。想定される機体構造はもはや意味不明の領域だ。強いて言えばアレは 「UFO?」 「おお! オーソドックスなアダムスキー型を目指したかったけどさすがに効率が悪すぎてね」 アイリス・ラバーのラバーは恋人のラバー。 「結局お椀型か葉巻型が適切って事で、どっちもくっつけることにした。名称も悩んだよ。旧世紀で人気なE号、Y型戦艦でもね、E号もY型も実のところあんまり現時点の技術レベルじゃ適切な形状じゃないし、その形状をしていない以上その名前を付けるのもアレだろうって事で、わかりやすく『シティシップ』に『コロニスト』という2系統、2つの名前で通すことにしたんだ。 これでいつでも宇宙人に会いに行けるね!」 その返答に思わず、その場にいた4人全員が耳を疑った。 「……ま、まぁ、人の趣向はそれぞれでですから……。それより質問に答えて頂きたい。何故『姫様』の印字がされてる物があるのか。 確かに『殿下』は『姫様』のデジタルクローンを求めました。しかしそれはまだ完成していないという話でしたが?」 「あー……そちらが提供したサンプルだけでは足りなくてね。同じ年齢のちょうど良い個体が見つかっていないんだよ。ネズミの脳みそだけじゃ無理だから人間の脳細胞が少し必要だって言っただろ? 出来れば目的の人に限りなく近い人間が良い。 貧困層のガキどもからなんとか確保出来ないか、色々ハンティングして、調理しているからそれ待ちなんですよ」 「まて、ハンティング……? 調理?」 「当然でしょう? お金をちゃんと持っている人間ならいざ知らず、カネのない子供なら多少乱暴に扱っても問題は無いですよ。 まぁ、所詮は貧困層。臓器とかでも実はそうですが、健康で栄養運動ストレスの無い富裕層の方が結局は性能が良くて売れるんですよ。 だから、集めたガキどもを半年ほど太らせて遊ばせて、時が来たらそのための費用を回収する。むしろ慈善事業ですよ。 命までは取りませんからね。いささか知的障害は発生するようですが……それは、コラテラルダメージという奴で」 「姫様のデジタルクローンを作るのに…………同じ年頃の娘を使う……そう言う意味で間違っていませんか?」 「ええ、間違っていません。もう少しお待ちください。養殖がそろそろ終わるので。候補が3つほどいますから一番適合する個体を探す意味も込めて実際に製造してみます。完成をお楽しみください!」 晴れやかな笑顔で痴女は言い切った。 「幼い頃にさ、今思えば子供だましな物だったと思う。でも宇宙物のSFを見てさ、惚れ込んだんだよ。 色々な宇宙人にさ。あの日から私は、恋する乙女になったんだ」 「……だからこれ?」 「その通り。私にとってオブジェクトって言うのは都合がいい入れ物だ。宇宙船の! 宇宙人に会いに行く宇宙船を作り出すための都合の良い大義名分、そして都合の良い入れ物だ!」 「呆れた……。おじいちゃんだったら、それもまたロマンって言ったかもしれないけど……」 「きみのおじいさん、君に近づくなって言うんだよ。ひどくない?」 「痴女は子供の教育に悪い」 「ひどいなぁ……子供が子供の教育に悪いって言うのかい?」 「……お姉さん、自分は処女ですってよく自己紹介するけど、アレなんなの? そんな格好して」 「決まっているじゃん。地球外知的生命体と出会ったら絶対にヤりたいことがあるの。私の子宮は 宇宙人の子供を孕むためにある。だからね、そのためにもまず地球人のメスという個体がどういう感じなのか目で見てわかってもらわないと」 「……ごめん意味がよくわからない」 「あーごめんね。さて、そろそろ行くよ。あなたたちの一世一代の大勝負の前に、私は星の海に船出する」 「…………未完成って聞いてるけど?」 「うん、そうだよ。でもあなたたちの大勝負に巻き込まれたら宇宙人に会えなくなっちゃう。大丈夫。未完成だけど時間をかければ光速まで加速出来るし、一応冷凍冬眠装置も用意した。私自身のデジタルクローンだってそれなりの数用意した。 いつか私は必ず、宇宙人に出会う。この恋が終わるそのときまで、私は例えおばあちゃんになっても恋する乙女は大暴走し続ける」 「……普通の人間の男に絶対向けないエロい顔……」 「そう? あなたも真剣に恋をすればわかるわ。恋は戦争、恋する乙女は最強なんだから」
https://w.atwiki.jp/alicecode12/pages/38.html
借金取りにご用心 小アンティル諸島方面差し押さえ戦 個人でオブジェクトを組み立てるアクロバティックな馬鹿が現れたからとっ捕まえてくれ そんなこんなで、カリブの島に今日もジャガイモたちは暑苦しい軍服にライフルや爆薬片手に行軍中である。 「水着の姉ちゃんたちがいるビーチにいきたい……」 「ヘイヴィアさ、それ何回目?」 「仕方ねーだろ! 行きたい気持ちは止められないんだ!」 「わかるけどさ……」 「クウェンサー、おまえ珍しく水着の姉ちゃんたちへの興味がわいてないな」 いつもの馬鹿2人が無駄口を叩きながら山の上に作られた私設の天体観測所へ向かう。 「オブジェクトを個人で組み立てるって、どうやって? 1機50億ドル相当の代物だぞ。それをジャンクパーツ類を使ったとしても個人で組み立てるって逆に超気になる! どんな技術を駆使したのか。単に丸いだけなんてオチじゃないよな!上がわざわざ俺たちにいけって言い出すんだから!」 クウェンサーの変態ナードっぷりに引きつつ、ヘイヴィアもその点を考え始める。 確かにあのオセアニアだって、国を挙げて作る事が出来たのが精々、0.5世代とかいう半端な奴1つなのだ。 サノバヴィッチという事例もあるが、結局アレはアレでMIBとか言う組織が暗躍し、オニオン装甲をやめた事で作れた物に過ぎない。 「それにしても、なんで天体観測所なんだ? 普通なんか、それっぽい工場とかじゃないのか?」 「ヘイヴィア、フローレイティアさんの話聞いてた? 対象はこの男。宇宙人が地球に攻めてくるってガチで唱えて町で有名な宇宙馬鹿。実際、宇宙人が地球に攻めてくるって叫ぶ以外はまともで普通に優秀な科学論文とかも何本も書いてるガチ科学者だよ」 「何それ怖い」 そんなこんなで、南国特有の植物を踏みつぶし、到着した天体観測所は望遠鏡が入ってるであろうでかいドームが1つ、それとは別にいかにもなかまぼこ型の倉庫のような物が3つほど並んでいた。このかまぼこ型の倉庫っぽい物が組み立て施設かもしれない。 「んで、どうする?」 「そんなの決まってるじゃん。別に俺たち2人しかいないわけじゃ無いんだ。みんなが持ち場についたら玄関からこんにちわだよ」 個人でオブジェクトを組み立てるとか言うアクロバティックな馬鹿がいそうな玄関を叩くこと10秒。 出てこないので、皆で一斉に突入する 「そっちいる!?」 「いねえ! どっか逃げたのか? 隠れたのか!?」 「秘密の地下室とかそういうの探せ!」 「望遠鏡のドームのとこにでもいるのか?」 そんな風にはしゃぐ正統王国産ジャガイモたち。 「くそっ、宇宙馬鹿はどこに行ったんだ?」 「ヘイヴィア……これ見てくれ」 「何だよクウェンサー……請求書? って、なんだこの数。しかも資本企業の有名銀行とかばっかじゃねえか!」 「そっちじゃない! こっちだよ」 そう言ってクウェンサーが差し出すのは何かしらのパンフレット。 「えーと……『自分だけのオリジナルオブジェクトを組み立てよう! 毎号買うごとにパーツが付いてくる。完成品はベーシックな動力炉と簡素で薄いオニオン装甲だけ。追加のオプションパーツ購入であなただけのオブジェクトに!』……なんだこりゃ」 資本企業にトンチキな企業がいて、オブジェクトを個人が作れるようにしているらしい。 完成までに3年かかるが、それで作れても精々20~30メートル程度の0.5世代未満の代物。 何しろ最低限のオニオン装甲と動力炉だけの代物なのだ。主砲副砲そのた推進装置は一切付いていない。 「んでもって、こっちは、やってきたパーツとかを図ってそのパーツの規格がどんなものか特定しようとしたメモ類」 「……つまり、こいつは毎号何たら系オブジェクトをベースに自作しようとしたって事か?」 「そういうことみたいだ。クソ、さすがに個人で動力炉を作るのは無理だと証明されてしまった!」 「……おまえ、何処に失望してんの?」 そんなこんなではしゃぐジャガイモたちの元になにやら無線連絡が入った。 『おまえたちは馬鹿なの? 件の宇宙馬鹿が車に乗ってそっちに向かってる! 買い出しに出かけていたみたいよ? ちゃんと本人がいるって確認して突撃した? と言うか、本来の任務はこいつがオブジェクトを組み立ててるだけじゃなくて お偉いさんから借金をしたあげく、返せなくて、よくよく調べたらオブジェクトを組み立ててた。だから差し押さえるって 任務だって本当にわかってるんでしょうね!?』 「「「……」」」 「き、きみたちいったい何かね!? ハッ! 人間に成り代わる宇宙人端末、レプリカント!?」 「……マジで優秀な科学者なのかこいつ?」 「いっただろ? 宇宙人が攻めてくるって叫ぶ以外はまともって」 「その一点で全部駄目じゃねえかこいつ」 目の前の薄汚れたよれよれの白衣に無精ひげの男を拘束しつつ、ジャガイモたちはこの男の作ったとされる オブジェクトについて質問しようとして ドカンと大きな爆発音と炸裂音が連続して響いた。 一斉に外を見るジャガイモたち。窓ガラスは何故か白い変なモチみたいな物質に覆われていて、何がなにやらよく見えなくなってる。 しかしそれでもよく目をこらすと、それが見える。 「オブジェクト!?」 『けいこくする。こちらはしほんきぎょうしょぞくのびーあんどだぶりゅーろーんのおぶじぇくと、リリアンである。このたび たびかさなるたいのうとしゅっとうようせい、およびしほんきぎょうきんゆうへんさいけいかくくみあいからのけいこくをむししたことで そのみがらをこうそくすることになった。せいとうおうこくのへいしにつぐ、そのおとこのみがらをいますぐひきわたせ。 ひきわたさぬばあい、ごたいまんぞくをほしょうできない』 「つまりどゆこと?」 「ぶち切れ取り立て人来る」 「「「…………」」」 「おまえ!! どっからいくら借りたァァアアア!?」 「マウストラップ(リリアン)か……どうどうと領土侵犯をと言いたいが……」 フローレイティアは煙管を一度机の上に投げ出し、頭を抱え込む。 「外交特権……! 差押人だから戦争国での運用に限り手出し無用、口出し無用だと? 全くなんて馬鹿な話だ」 そんな訳で、このリリアンと称するオブジェクトは容赦なく、白い変なモチみたいな物質、トリモチをその主砲でぶちまける形で建物ごと債務者の宇宙馬鹿を捕まえに来たらしい。 「よし、引き渡そうぜ!」 「いや、ドア開かないんだけどどうやって?」 「「……」」 「あのトリモチ馬鹿、脳みそまでトリモチが詰まってるんじゃ無いよな!?!?」 「と、とにかく今は応戦するしか無い! じゃないとアレ、いかにもなアームが付いてる! アレで天井突き破って捕まえる気だ!」 慌てふためくジャガイモたちを尻目に多重債務者様が一言 「慌てるなぁぁああああ!!! あんなもの宇宙人の侵略に備えた私の第3世代オブジェクト(0.5世代)『キジンテンユウ』の手にかかれば鎧袖一触!」 「てめーのせいだよ! 偉そうにするな!」 と言う物の現状貴重な戦力である事は確かでとにかく建物内から移動しようとして 『けいこくする。にげることはすいしょうされない。おまえたちのうごきはリリアンのせんさーですべてとらえている。そもそもはんどめいどのぽんこつおぶじぇくとにまけるほどわたしはばかじゃない。みるといい!」 そのトリモチオブジェクトには人を捕まえる(?)もとと思わしきアームがついていたがそれとは別にでかいアームがついて左右非対称となっている。そのでかいアームが動いて主砲の形状を変形させていく。最終的に出来上がったのはでかい円筒。 そのでかい円筒となった主砲を建物とは別方向の山の斜面に向けて 発砲、着弾、大爆発。 『ほばくようねっとにむすうのばくだんをとりつければ、いっぱつだけとはいえ、たいおぶじぇくともかのうなかりょくをたたきだす。 はんどめいどのぽんこつおぶじぇくとをこわしてやってもいいんだぞ。だが、それはしない。それはさしおさえるものだ。 さいごのけいこくだ。おとなしくせよ』 「「うん、これ、おとなしくしておこう」」 「そうだな」 馬鹿2人とジャガイモたちの総意がここに決まった。 「諦めるなぁ!! おまえたち私の身柄を捕まえに来た正統王国兵だろ!? 自国民が他国に拉致監禁されようとしてるのに!やはり、宇宙人はすでに地球の高官と接触してて……ああ、このまま私はアブダクションされるのか……」 轟!! 強い光と衝撃波、トリモチで固まって無かったら窓ガラスは全部割れてる。 その代わりトリモチで固められたドアが勢いで開き、トリモチオブジェクトが赤く装甲板を染めながら転がっている。 「いったい何が……」 「見ろ! ヘイヴィア! おい、宇宙馬鹿、まさかアレおまえのか!?」 「おお! ……なんで?」 キジンテンユウ、トリコロールカラーに主砲と思われる2門のでかい対空プラズマガトリング砲を球体の両脇にそれぞれ装備。 副砲として取り付けを考えてたであろう対空機関砲のオプションパーツらしき何かを踏みつぶしながら、巨大な鉄製車輪を動かして かまぼこ型の倉庫っぽい建物の一つから出てこようとする。 「おっかしーなぁ……」 「何がおかしいんだよ!? 宇宙馬鹿! てめぇ、なんて物を」 「いや、なんで動いてんだ? 操縦システム未完成だしエリートもいないんだけど」 「「えぇ……」」 そもそもそんなものでどうやってトリモチと戦う気だったのか。 「とにかく、もしも中に誰かいて、そいつが動かしてるとしたらいったい何のつもりで! おい、誰かいるのか!?」 無線で呼びかけてみたところ、返答らしき物が聞こえてくるが、どうも様子がおかしい。 『――へ……ぱ…………』 「くそっ、ノイズばかりだ」 「これってノイズか? なんていうか、純粋に赤ん坊のうめきみたいな……」 『――ヘイヴィアぱ、ぱ……』 『ふっ、ざけんなよ! ぶっころしてやる!!』 トリモチオブジェクトがトリモチ主砲をぶっ放し、敵オブジェクトとなったキジンテンユウの足回りを拘束にかかる。 次に例の大型捕縛用ネットをぶちかまし、対空プラズマガトリング砲が動かないようにジョイント部分に絡めていく。 『――ヘイヴィア、パパ!!』 「えっ゛???」 『――らむさーるほうめん、もろーくおうぞくのわたしだよ! タージョだよ、ぱぱ!』 「「「は?」」」 とりあえずジャガイモたちが一発ずつ、レーダー分析官の顔面に手のひらを折り曲げて固めた物をプレゼントしている 間にも戦況が変わっていく。 『さしおさえだ!! しにやがれ!!』 ありったけのトリモチと捕縛用ネットで身動きがとれないキジンテンユウにトリモチオブジェクトが近づいていく。 やたらと物騒な言葉を使ったが、狙いとしては差押なのだから壊しすぎれば大損である。 完全に無力化するべく、キジンテンユウの主砲を分解してやろうとアームを広げ近づいて―――― ――衝突。 トリモチで拘束していたハズのキジンテンユウは明らかに200キロ越えの時速を出してトリモチオブジェクトに正面衝突。 いきなりの加速に周囲がソニックブームで破壊され、トリモチで固められた建物じゃ無かったら今頃吹き飛ばされてるであろう 衝撃で地面が揺れる。そのままプラズマ砲をトリモチオブジェクトにぶちかました! 「……終わったのか?」 「あの0.5世代もさすがに無理をしてたみたいで完全にバラバラだ」 「おお! 我がキジンテンユウ! そうか、私を守るために! これは天の啓示だ。なんとしても宇宙人から地球を守れと」 「「おまえは一度黙れ!」」 「あれは何だ?」 「……なんつーか、絶妙に嫌な予感がしてきたぞ……」 「うぇ……マジかよ」 それは…… 「人のか? 大きさが小さい気がするが……」 「脳みそかよ……」 どさくさ紛れに逃げようとしていた多重債務者のクソ野郎をヘイヴィアが話があると拘束しとりあえず顔面に一発。 「あの脳みそは何だ? どうして俺の名前を呼びかけた? モローク王家のタージョってのはもう5~6年前に死んじまった王女の名前だ テメェ、何をした。言いやがれ」 「知らない! 私が知るはずがないだろ! よりにもよって王族関係に何か手を出すはずが!」 2発目、3発目。さすがにヤバイと周囲がヘイヴィアを止め、ひとまず脳みその入ったカプセルを回収。 現場を離れ、さらに奇妙な話を聞くことになる。 「あの脳みそはウチの医療部門によると人間の脳みそじゃなくて、肥大化したネズミの脳みそのツギハギだったそうよ」 「はい? フローレイティアさん本当ですか?」 「正直私のほうが知りたいわよ」 事が事だけに、あの宇宙馬鹿はそれ相応の捜査機関に徹底的に絞られる事になるらしいが……。 「私たちにわかるのはここまで。王族関係が相手じゃ命がいくつあってもわかった物じゃ無いから、あんたたちもとりあえず今回の件はやばい事件に出くわしたで心の整理をつけておきなさい」
https://w.atwiki.jp/alicecode12/pages/39.html
道なき道を作ろう ザグロス山脈工作戦 人の裏庭でガーデニング趣味に走る馬鹿をぶん殴ってこい。 そんな命令に従いえっちらおっちら『正統王国』産ジャガイモたちが行軍してきたのは雪山地帯。 どでかい謎の盆地が広がり、地図の殆どが使えない状態を4人のジャガイモが進む。 「ミョンリ、道あってんのか?」 「GPS的にはあってますって」 「寒い。ねえ君寒くない?」 「このていどでねをあげるほどやわじゃない。はやくかせがなきゃ」 その少女は、『正統王国軍』の防寒コートとライフル以外は『正統王国』軍の軍服や装備品を一切持っていなかった。 それどころか、その防寒コートの下にあるのは、黄色い『資本企業』エリートの軍装。 「さしおさえいって、リリアン(マウストラップ:トリモチオブジェクト)をげきはされたあげくほりょになる。最悪。わたしのきゅうりょうひょうかにかかわる。……いや、へたしたらわたしのほうにとりたてにんがくる……」 「だ、大丈夫ですって、そのうち捕虜交換協定で帰れますから」 「だから最悪なの!!!」 宇宙馬鹿の取り立て人として現れたトリモチオブジェクトことリリアン(マウストラップ)のエリートである。 「ほりょこうかんまでに、せめてなにかしらのせんかをたてなきゃ……。じょーしがとりたてにんをわたしあてにようだてる……むり。いそがないと」 「なんか……大変だな。亡命とかしないの?」 「ちすじばかのせいりょくとかむり。わたしのそふぼはおまえたちのどれいかいきゅうだ」 それはまたご愁傷様でとしか思わないクウェンサーたちとしてもこの4人組の組み合わせは以外である。 『資本企業』の捕虜の女の子エリートにその監視なのか、付けられたミョンリと馬鹿2人。 『資本企業』と大なり小なり縁があるのは整備のばあさんだが、そっちでは無くこっちに付けられた。 (状況とか考えるに、万が一裏切っても上にとって痛くは無いし俺たちにどうにかしろってとこか) クウェンサーはここはそういう場所じゃ無いんだけどなぁとか小さく口の中でぼやきつつ でかい謎の盆地に吹き付ける冷たい風から身を守るべくいつの間にか脱げた防寒コートのフードをかぶる。 思い出すのはフローレイティアさんから聞いた話。 「何処の勢力なのかわかんないオブジェクトが全力で山岳地帯を整地して道を作ってるって何だろう?」 「ばしょてきとスペックてきにどーせ、しゅうきょうばかだろ。最悪のときは『じょーほーどうめい』のばかたち」 「どういう基準で最悪なのかさっぱりわかんねえ」 「とりあえず、整備基地の設営に使えそうな場所、早く見つけよう。それが俺たちの仕事だし」 でもって、立派に最悪はやってきた。 「最悪! ぜったいあれは『じょーほーどうめい』のばかたち!」 道を整地してる馬鹿オブジェクトへの嫌がらせのつもりで折角きれいにした道をありったけ爆破したら 『おれが今までやってきた事を無駄にしやがって、ぶっ殺してやる』的な勢いでオブジェクトが戻ってきた。 『便宜上暫定的にアレをロードローラーと呼称する! おまえたちは速く逃げて、整備基地の設営作業!』 「無理無理無理!! いくらハンドアックスでもたかが人間が仕掛けた爆薬程度で戻ってくるのに無理!」 「はやくはしる! しんだら1セントもかせげない!」 『資本企業』流のジョークに返答も出来ず走るジャガイモたち。それに対してさすがはエリート。 このくらいなら問題ないらしく何度か後ろを振り向き、ジャガイモたちに安全地帯へ誘導していく。 「『じょーほーどうめい』のひみつおぶじぇくとげきは……これならきゅうりょうさていにまいなすはつかないはず……あるいみ最高かも」 「メンタルくっそつえーなおまえ」 銀色の髪に対してアジア系の顔立ちをした少女は、小さな窪地に身を隠し、ジャガイモ3人衆もその後に続いて身を伏せた。 「あたりまえ。さしおさえにんがやられるってのはあっちゃいけないこと。びーあんどだぶりゅーろーんはそのへんきびしいんだから」 「それにしてもあのオブジェクト何しに整地してんだろ。あっ、折角爆破したとこまたまっすぐに整地始めた」 「ハッ、どうせまっすぐじゃ無いと転んで戦えないとか、そんなオチだろ」 「「…………」」 「おい、なんで黙るクウェンサー。まさかマジにしてんじゃいよな?」 とにかく現状は良いと言えない。仮称ロードローラーは国境地帯でオブジェクトの道を作っている。 割れたステンドグラスと言われてる世界では、今起きてる戦争の多くがオブジェクトを効率よく運ぶための道の奪い合いとも言われている。 そんな状態で道を作り出すこいつは、戦闘しか出来ないオブジェクトに対して戦略的な優位性を持っている。 「尤も道を作ってくれるって事はこっちも利用できるって事か……」 第37整備機動大隊のオブジェクト、つまりお姫様のベイビーマグナムがその道を突き進む形でこっちに合流する。 オブジェクトという怪物同士の戦いが始まった。 「……いや、ちょっとまて、これ最高に最悪じゃん。にげばないじゃん。どうにかしろッ!? ちすじばかども!!」 「「「えっ? あっ……いつものことだから反応遅れたわ」」」 クリエイト005(ロードローラー)のエリートは焦っていた。すでに決算期までの最低限ノルマは果たしてあるが、それだけだ。 とにかく今は撃破される訳にはいかない。ノルマに追われるなんて『資本企業』的だけど、この機体の建造には『資本企業』もかかわってる以上、連中のノルマ重視、利益率最重要視に多少なりとも引っ張られる。 (ウチのおえらいさんが、『資本企業』のれんちゅうからおかねなんてかりるからこんなことに……) 元をたどれば『正統王国』に潜入するために作ったダミーカンパニーがクリエイト005の建造元だ。 だというのに、いくらダミーとは言え、一切営業活動っぽい物をしないのは不自然と資源貿易関係のそれっぽい行動をしたら予想外の大ヒット。スパイたちは本業を忘れて営業マンのスーツを着けて賭けづり回る日々となってしまった。 (……『資本企業』相手に情報で負けるとは……) 『資本企業』と『情報同盟』では表面上の資産で『情報同盟』は負けている。尤も『資本企業』は上に言えば行くほどその財産は有価証券やデリバリティブだのポートフォリオだのと色々な金融商品に化けてるため、時価総額ならまだしも即座に動かせる現金と言う意味では実のところ『情報同盟』の方が上回っている。 (わたしたちのれんたいちょう、どうにかくびをきれないかな……。げんじつとうひしてるばあいじゃない) しかし、それは、『情報同盟』に金に困ってる個人がいないと言う都合の良い現実ににはならない訳で。『資本企業』の調査会社(スパイ組織)につけ込まれたのだという。 こうして、『情報同盟』の一大スパイ組織であった『その連隊』はいつの間にか『資本企業』の出先機関として『信心組織』や『正統王国』相手の工作をさせられている。非常に厄介な事は味方の『情報同盟』相手の活動は命じられていない。 離反させないための小細工だろうが、普通に効いてしまうから困る。 今では『情報同盟』の命令に従いつつ、『資本企業』の要望を最大限かなえる組織として動いている。 正直キャビネットにいつばれないか不安だ。 『いちおう、けいこくはしてあげる。そこのしょぞくふめいおぶじぇくとへ。いますぐひきなさい』 名誉と血統を重視する『正統王国』のエリートは『正統王国』らしく警告から入った。尤も相手の第1世代はこっちを撃つつもり満々で7門の主砲を容赦なくこっちに向けている。 が、クリエイト005のエリートからすれば、ありがたい時間でしか無い。目標は山、山、山! 轟!! と衝撃波が盆地を支配した。 目の前の山という山にありったけの副砲を次々とぶち込み、何かしら仕掛けが施されていたのか、雪崩を打つように崩れ、 ベイビーマグナムの足回りはもちろんの事、覆い尽くせるだけ土砂で覆い尽くす。 「「「うわぁああああああああああああああ」」」 当然馬鹿4人組からすればフ○ックユーと叫びたい所行だ。 「さしおさえだ! ぜったいしなせてやるぅぅううう!!」 「このエリートなんか出来ないの!? びっくりどっきりメカを操るんだから、こうすごい超能力とか!!」 「とりたてにんにちょうのうりょくなんかあるほうが最高におかしいだろ!!」 訳わからん口論をしながら埋もれた仲間たちを掘り起こすヘイヴィアとトリモチエリートの2人組に助けられながらもクウェンサーは見た。 ロードローラーが、主砲を思わしき射程がやけに短いプラズマ砲とドーザローラーを動かして再び地面をまっすぐに工作を始める姿を。 『なにがしたいの???』 無線機から聞こえるお姫様の声。クウェンサー的にはもう確定だった。 「こいつは、まっすぐ平らな土地じゃ無いと満足に戦えないんだ。こいつの戦術は地形を自分に都合良く改造してキルゾーンを形成する事。 ある意味で戦闘には防衛任務や仲間のオブジェクトの整備基地の整備工事とかそういうことを受け持つそういう兵站戦のオブジェクトなんだ」 暫定呼称、ロードローラー(クリエイト005)は建造時、こう言われていた。 限りなく『第3世代』に近づいた機体。数多くの自称第3世代はあれど、戦略的な特別な意味を持つオブジェクトは未だ少ない。そういう意味で第3世代を名乗る機体の中でも特に近づいた機体の一つだと。 ベイビーマグナムの主砲のコイルガンがロードローラー(クリエイト005)を狙う。 しかし、身動きが殆どとれないベイビーマグナムの撃ち込んだそれは装甲にはじかれる。小破。 けれど、数を重ねればコイルガンの砲弾は整地したハズの大地に穴を開けたり、そのまま残骸が散らばって凹凸を作っていく。 「いいぞお姫様。お姫様の目的は真っ平らな空間を徹底的に荒らしてやるんだ! 相手の武装から考えて近づかせなければお姫様を撃破出来ない! 仮に出来たとしても時間と準備が必要なハズだ! 事前動作さえ見抜けばどうとでもなる!」 『わかった』 クウェンサーの指示に従い、その通りに行動するお姫様とお姫様の攻撃に反撃しながら、必死ででこぼこになったフィールドを 平らにしようとがんばるロードローラー。 「つってもお姫様は現状動けねえんだ。これじゃ島国の言葉の千日手だぞ」 「だから、肝心な所は俺たちがやる」 「「は?」」 女性2人、エリートとミョンリがどん引きしながらこっちを見ている。 「あのドラゴンキラーのお2人頑張ってくださいね」 「最高にばか。こっちをまきこむな」 「何言ってんだ。2人にも手伝ってもらう」 ミョンリの顔が引きつり、銀髪アジア系のエリートが天を仰ぐ。 「やることは単純だ。ロードローラーはドーザローラーとやけに射程の短い特殊な主砲で山を崩したりまっすぐ平らなでかい道を作っていく。 けれど、推進方法は多脚。たぶんふんばりを効かせるためだと思うけど、実際には何かがうまくいってないのか平らな空間じゃ無いとちゃんと戦えない。なら、小さくても突然現れた障害物に対応できるほど器用なオブジェクトじゃ無い」 「かんたんにいうな。しょうがいぶつってなんだよ」 その言葉にクウェンサーは当然と言うように 「俺たちの本来の任務は何でしょう? 整備基地の設営場所探しです。それにあいつは俺たちが爆破したらすぐさまやってきた。 観測機材はもって来てるし、これだけ人数がいたら、いけるでしょ。計算して観測して色々な場所に爆薬を仕掛ける簡単なお仕事です」 必死に場所を平らにしているオブジェクトの後方で突如爆発が発生。穴が開いた。 仕方ねえ、バックで……と動き出したところに右側面に爆発。これまた穴が開く。次は斜め左側面後方。次は次は次は……。 焦ったクリエイト005のエリートは急ぎ対応するべく動かして、足がもつれた。巨大なオブジェクトが転倒する。 「「「うわぁあああああああああ!!」」」 巨大なオブジェクトが転倒する(すっころぶ)。 その衝撃の余波だけで馬鹿4人組はその場から吹っ飛ばされた。と言ってもせいぜい1メートルくらい。 「さっさとどけぇえええ! 最悪! ぜったいさしおさえる。しなせてやるぅ!」 「うわぁ、暴れないで! そこの穴におちるぅう!」 「なんつーか、この状況で遠慮無くラッキースケベが出来るおまえには尊敬の念しかねーわ」 「どのへんが尊敬できるんですか! 『うわぁ……』しかないんですけど! これがヘイヴィアさんとのからみなら、まだマシなのに」 ミョンリの言葉に馬鹿2人が色々な意味で戦慄の表情をする中、『正統王国軍』の防寒コートの中に入り込んだ馬鹿の頭を蹴り飛ばして脱出を 図るトリモチエリートの少女。その勢いのままクウェンサーが落ちると言った深さ1メートルほどの穴の中へ。 「「うわぁ……」」 ヘイヴィアとミョンリの声が重なる。ラッキースケベは継続中。今度は尊敬の念も出てこなかったらしい。 「つか、ここまで来るとおまえなんか呪われてね? なんでそんなきれいに重なる事が出来るんだよ」 「と言うか、そろそろ可哀想ですから助けましょうよ」 こうしてヘイヴィアとミョンリの2人組によって助け出されたクウェンサーとトリモチエリートの少女。 トリモチエリートの少女は、顔真っ赤にしてクウェンサーをにらみつけるが、クウェンサーの方は 転倒して、必死に立て直そうと悪戦苦闘するロードローラーに視線を向けている。 「いくら何でも戦いが苦手過ぎる……。こんな欠陥品、単機で動かして大丈夫なのか? 護衛があるように見えないし…… 何か目的が……フローレイティアさん!」 ようやく起き上がり、ロードローラーが再び整地作業に入りながら徐々にベイビーマグナムから遠ざかっていく。 それを見ながら、待っているとフローレイティアはクウェンサーからの疑問にようやく答える事が出来た。 『大量の爆薬がそこら中に仕掛けてあったわ。山の1つや2つ徹底的に吹っ飛ばす気ね。正直いつ爆発するかわからない』 「……急がないと……俺たちも姫様も危ない!!」 ロードローラーとベイビーマグナムの距離はどんどん開いていく。 『正直、どれだけの爆薬が存在するかわからないわ。このままそこら中の爆薬が起爆したら、山岳地帯全体が オブジェクトの道になったっておかしくない! 爆発を生き残っても追加のオブジェクトが来たらおしまいよ!』 「フローレイティアさん! その爆薬! 見つかった場所端末に送ってくれませんか!?」 クリエイト005のエリートは一息付けそうでついつい安堵のため息が出てきた。 もうすぐ安全圏になるし、仕掛けた爆薬は遠慮無く山の1つ2つ吹き飛ばしてくれるだろう。その後を道路にすれば 新たなオブジェクトの輸送路の出現だし、さらなる『ノルマ』の達成にも役に立つ。 轟!! と、新たな衝撃波が大地を揺さぶる。 それも一つでは無い。複数の爆発物が想定外の爆発をする。それぞれの爆発の衝撃と爆風が綿密に計算されていたのか クリエイト005に襲いかかる。脚部サスペンションに異常不可。緊急措置。多脚構造を生かして―― ――失敗。転倒。 「また転んだか。だよな。それがおまえの弱点だ。ふんばりを効かせるバズが、おまえは逆に踏ん張りがきかない。おまけに整地作業にこだわるから、本当はもっとスピードが出てもおかしくないのにおまえの進む速度は計算しやすい。おまえの仕掛けた大量の爆薬。全部は無理だけど利用させてもらったぜ」 「こっちもおわったよ。たく。これが終わったらオーバーホールだ」 整備の婆さんのかけ声。そして、馬鹿4人組含むジャガイモ立ちは全員耳を守り伏せる。 発破。ベイビーマグナム土砂崩れから脱出。山岳に仕掛けられた爆薬のうちのいくらかをベイビーマグナム脱出用に。 「もう終わりだ、ロードローラー。おまえは戦闘が下手すぎる。いっそ全部土木作業能力に振り切れば良かったのに」 ロードローラー、ベイビーマグナムの接近に気がつき、自分の主砲で足を1本切り落とす。 「「「えっ?」」」 2本目を切り落とす。最後にはでかいドーザーローラーを。 ただでやられるつもりは無い。軽くなるためだろう。そして、ついに立ち上がる。8本足から6本足へ。 射程距離の短い主砲だが、副砲は至ってオーソドックス。下位安定式プラズマ砲が火を噴く――! ――だが、お姫様が早かった! お姫様の7門の主砲、そのすべてが一点に向かってレーザーとコイルガンを射撃した。 折角起き上がったロードローラーだが、脚部を狙われ、バランスを崩し副砲の狙いはずれる。 そして、ベイビーマグナムの下位安定式プラズマ砲がたたき込まれた。 『ロードローラー撃破! みんなよくやった!』 フローレイティアさんの言葉にジャガイモたちが沸き上がる中、一人険しい顔をしている少年がいる。 「……これで終わりじゃ無い。調べよう」 「何言ってんだよ。クウェンサー?」 「いくら何でも戦闘が下手すぎる。あんなオブジェクトが単機で活動している方が不自然だ。きっと何かやっている。この地域を全部徹底的に捜索するべきだし、何よりもあのオブジェクトにだって、整備基地があったはずだ」 『第3次経過報告書(暫定)』 Plan.WEフェーズ2において重要となる希少資源の開発に関して。 Project:Iのコアユニットの完成に必要なパーツは全部で7万点にもおよび、それには特殊なレアアースを豊富に使用します。 Project:Iの製造は機密事項であり、可能な限り洗浄を行い正規非正規問わず様々なルートを通じて調達を行っていますが 対象となっているレアアースは各勢力ごとに厳密な監視網を強いており、洗浄に多大なコストと時間を必要となります。 そこで、『情報同盟』の秘匿連隊の一つをかねてより制御下においており、その保有オブジェクトを使用する手はずを整えました。 かねてより、競合地帯(コンテスト・エリア)に囲まれた緩衝地帯(バッファー・ゾーン)として資源開発の手が止まっているザグロス山脈方面にて 採掘能力を有する工作オブジェクトを派遣し、鉱山開発を行いたいと思います。 「なんだこれ……」 「なんだこれじゃなくて手伝って欲しいだけど!? クウェンサー!」 銃撃戦の真っ最中に端末を見るクウェンサー。 撤収が遅れていたのか、撃破したロードローラーから離れること10キロの地点にあからさまにロードローラーが止まっていたと思わしき痕跡を 発見。何しろ周囲は立派に山だの瓦礫だのに囲まれているのにそこだけぽっかりと真っ平らなのだから妖しい雰囲気丸出しである。 取り残されていたのか、或いは純粋に殿だったのかは不明だが、残っていた兵隊たちが銃撃を仕掛け、 ヘイヴィアとミョンリがライフル片手に応戦しクウェンサーはハンドアックスで攻撃。謎の地下施設へと進入を果たしていた。 「おまえたちは、やりかたがあらっぽすぎる。もっとすむーずにやるべき」 「そういうエリートさんもそのライフルは何のためにあるんですかねぇ!?」 コツンと、ヘイヴィアの目の前に手榴弾が落ちる。 次の瞬間、黄色い人影がライフルのストックをゴルフクラブよろしく振り回して敵陣へ手榴弾をホールインワン。 「ライフルはこうつかうもの」 「……絶対違うっ!?」 手榴弾の爆発音が炸裂する中、トリモチエリートの少女とヘイヴィアがそんな会話を横目にクウェンサーは見つけた端末とメモリの束を次々と 操作していく。 希少資源の含有率、精製コストの計算式、オブジェクト、クリエイト005の精製設備を使用した場合の搬入速度。 けれど、妙な報告書に記載のあったPlan.WEだのProject:Iだのその辺に直接繋がりそうな情報は無い。その代わりに出てきたのが 「??? なんだこの数字。こっちは資本企業のニュース記事。特定のニュースばかり保存しているのか?」 「……はっ、てんけいてきなとうしさぎのにゅーすだ。……7thコアのほうむぶがうごいているのか。そのうちすぐにつかまるぞこいつら」 「なんだって?」 「こっちはぷらいべーとばんくどうしのそうきんきろく……。しょうちゅういれかえて……まねーろんだりんぐ?」 「ぷ……プライベートバンクってあのお金持ちがお金持ちする銀行のことですか?」 ミョンリが引き金を引きながら反応して、『資本企業』のエリートの少女(おかねのせんもんか)と 『正統王国』の特権階級、『貴族』ウィンチェル家の嫡男ヘイヴィア=ウィンチェルヘイヴィア様が鼻で笑う。 「「これだから平民(貧乏人)は」」 「なんだろう、どっちもディスられてるのに、貧乏人の方がイラってくる」 「なんでだよ!! これだからちすじばかは最高にこまる!」 ヘイヴィアが敵兵に銃弾を撃ち返してるなか、エリートの少女は得意げに説明を始める。 「プライベートバンクっつーのはどこぞの金持ち個人がやってる銀行だ。普通の銀行ってのはそういう会社のこと。 それに対して、プライベートバンクはどこぞの金持ちがオーナー社長って奴をしてる銀行だ。そいつ個人の 財布と信用がある意味すべての銀行だな。つまり金持ちによる金持ちのためのお友達銀行って奴だ」 「でもって、しょせんこじんがしょゆうするぎんこうとそういうかいしゃ、どっちがでかくてかくじつか……」 そういう意味では、二流による二流のための二流銀行。それがプライベートバンク。 どこぞの普通の銀行がたまにプライベートバンクサービスとやらをやるがそういうのはプライベートバンクに 妙な夢と希望を持つ三流以下を食い物にするためのサービスだとヘイヴィア達は言う。 「わかりやすくオブジェクトで例えるぞ。オブジェクトは1機だいたい50億ドルかかるわけだ。 個人がこの50億ドルを稼ごうと思ったらかなり頑張らないといけないし、運も必要だ。時間もいるかもしれない 或いは特殊な技術なんかも必要かもな。これが、どこぞの王侯貴族や会社ならどうだ? 端金と呼ぶには大きな額だかが 払えないわけじゃ無い。それも複数機体分な」 つまりは、個人の出せるカネなんぞたかがしれている。金融市場とか言う世界で君臨しているのは無数の『組織』だ。 どんな金持ちであろうが、この当然の摂理を超えて暴れることは出来ない。仮に出来たとして数日が精々。 そんな個人の金持ちを相手にするプライベートバンクはそういう意味では二流による二流のための二流銀行。 「それでもぷらいべーとばんくをりようするかねもちたちがいるのは、ぷらいべーとばんくがいっしゅのさろんになってるから。 あたらしいおかねもちのおともだちをつくるのにいいばしょになってる。あと、こじんがけいえいしてうんえいしているから わがままをかんたんにきいてくれるの。それこそ、それとなく、まねーろんだりんぐをさせるのに最高のばしょね」 「うわぁ……って感想しか思い浮かばないですね」 ミョンリがそう言いつつ、マガジンを交換する。銃撃戦が始まってもうそろそろ10分近くたちそうだ。 つまり、この妙な数字やオブジェクトとは関係なさそうなデータの類いは不正な送金情報。マネーロンダリング的な奴の。 「なぁ!? そろそろマジでおまえ等もなんかしろよ!! さすがに俺をミョンリの2人しかやってねえのはやべぇって!」 「……しかたない。じゅうせいからいってもんだいないかずしかのこってない。最高」 エリートの少女は『正統王国軍』の防寒コートとライフル以外は全部わざわざ『資本企業』の装備を身につけている。 捕虜だというのに偉そうに戦地に行くときにそれを要求したのだという。防寒コートとライフルだけは 妥協させられたようだが。そんな『資本企業』の装備品の一つ、スタングレネードを取り出して、ベースボールのバットのように ライフルでスコーンとホームラン。 それも1発では無い。2発、3発、4発、5発、6発 「っていつまでやるんだよぉ!?」 ヘイヴィアの言葉に応えるよりも前に気がついたら、敵兵はすべて無力化されていた。 強い閃光と爆音で脳みそに衝撃を与えて軽く気絶させたり、数秒ほど動けなくさせるそれを6連発。 6連発スタングレネード爆撃のあと、ライフルのストックでぶん殴り衝撃で完全に昏倒させ、ついでにダクトテープでぐるぐる巻きにされている。 「……そういう技があんなら、もっと早くやってくれないかな?」 「はっ、このにんずうだからできただけだ」 「全員殺さずに仕留めてますよ、この子」 「わたしはとりたてにんであり、さしおさえにん。ころしたら、『したい』いじょうのかちはない」 「これ『資本企業』的発想なのか、この子特有の思考回路?」 思わず馬鹿3人組がそんな感想を口にする。おかげで捕虜には困りそうに無い。 「とにかくわかったことは3つ。ロードローラーの正式名称は『クリエイト005』。名前から『情報同盟』確定。 そして、あいつはここで秘密の資源開発をしていたこと。そして……妙な詐欺グループと何かしらつながりがあるって事だ」 「なんだってそんな訳のわかんないはな……し……に?」 「どうした? ヘイヴィア?」 ヘイヴィアの動きが固まっている。それは1枚の紙切れを踏んづけていることに気がついたから。そしてその紙切れには 例の『脳みそ』の写真と、死んだ王女様の写真が載せられていた……。
https://w.atwiki.jp/moka_japa/pages/16.html
「この一蹴に愛を込めて」 加茂JAPANリレー小説第一弾。 県立富士見ヶ丘高校サッカー部を舞台とした物語。 主人公柏木周人が3年の夏を迎えたところから物語が始まる 柏木周人 主人公。サッカー部所属だが3年間で公式戦出場はゼロ。夏の大会メンバーからも漏れる。 佐藤祐司 周人の友人。中学時代から名の知れたプレイヤーで、根っからのスポーツマンタイプ。 真島沙耶 サッカー部のマネージャー。偶然、橋の下で練習している周人を見かけ励ます 斉藤一馬 サッカー部員。夏の大会にFWとしてメンバー入りする。 西川健太 周人の友人。冗談のわかる奴で周人とは気が合う仲間。夏の大会からはメンバー漏れ。 三浦 サッカー部顧問。サッカーに関しては並々ならぬ情熱の持ち主。通称キング。 「○○、俺はサッカーが好きだ」という言葉は、 某サッカー漫画の「○○、サッカー好きか」に対するアンサーワード。 。
https://w.atwiki.jp/kashonomiyakoyakusho/pages/2.html
メニュー トップページ 創作ガイドライン キャラクター一覧 施設一覧 用語一覧 プラグイン紹介 メニュー 右メニュー リンク @wiki @wikiご利用ガイド ここを編集
https://w.atwiki.jp/sailorsousaku/pages/88.html
愛を込めて花束を みなしほ TLみなしほ補足 鴨さん著「揺れるポッピングシャワー」 http //privatter.net/p/438494 の読後を推奨します。 美南の家に行くと、少なからず緊張する。 その緊張は、放課後、生徒会室で二人きりになってからずっと続いている。 隠しきれていないのだろうオーラに周りが示し合わせたように仕事を処理して帰っていって、美南と紫歩、二人だけになる。 毎日顔を合わせていて、話すことはそんなに特別な話題はない。 美南の口から生まれる、科学部の活動の話だとか、家庭のこと、彼女自身のこと。それらを、にこにこ聞いていられたら、紫歩は充足感に包まれる。 照明の煌々と光る中を、窓から見える暗闇との対比にくらくらしながら見回りしてゆく。今日は文芸部は綾葉の脱稿祝いに一週間休みであるし、漫研部の賑やかな面々も帰っているらしい。たまにダンス部の先輩が一人、音楽に合わせて夜遅くまで練習していたりもするが、それもなかった。演劇部も、あの少し流れる時間のゆっくりしたメンバーたちは帰って行ったらしい。 やたらと賑やかな屋上にも、空色のセーラーの親友や、彼女に熱い視線を注ぐ二年の先輩も居なかった。二人乗りで帰る姿を頻繁に見るようになってから、少し経つ。距離は縮まったのだろうか。 クールな美貌で赤タイツの風紀委員長も帰ったらしい。美南には、近寄り難いのは見た目だけで普通の子だよ、なんて笑われたけど、紫歩は風紀委員長のことが憧れだった。 美術室も、真っ暗だった。そういえば今週は何かと予定が立て込んで、行けなかったと思う。あの、あひゃひゃ女がそれをどう感じたかはわからないが、さみしい。来週になったら、昼休み、一緒にコンビニでも行くか、と勝手に予定を決める。 なんとなく、人の気配を察する。ヒールの音がかすかに聞こえる。 背筋がゾッとすることはなく、ああ、きっとあの人か、と美術室から離れた。 隣にいる美南には、そのコツコツと歩く音も聞こえなかったようだ。 意地悪な人ね、と内心クスクスしてしまう。それに存外シャイなのだろう。美南のことが好きだから、わざと姿を隠しているに違いない。 図書館も消灯、施錠されていた。一公立高に相応しくない、あまりに立派な図書館が暗闇の中でも、少ない灯りに照らされて、ぬぼおっとそびえ立っている。借りっぱなしの本があることを思い出し、月曜の朝一番に返さないとな、と予定が埋まってゆく。 会話をすればするほど、冬に向けて着込んだ真っ黒のカーディガンが外気を吸い込んでゆくほど。 身体は熱くなる。顔と冷気の差に、肌がぴりぴりする。 「大丈夫? 紫歩」 「ええ……何でもないの」 「紫歩はそうやって何でもかんでも隠すからなあ。ちゃんと私に頼ってよ?」 「うん。あなたに伝えなきゃいけないことは、ちゃんと言うから」 少し視線の下にあるお団子が、ひょいっと揺れる。自分より明るい髪に、明るい虹彩は暗がりの中でもきらきらして見えた。 母親じみた慈愛の目線に、心臓が高鳴りだす。 旧校舎は見回りの範囲ではない。電子の防犯センサーが入り口についている程度で、生徒には立ち入り禁止を申し付けているのだから、という判断だった。 今のところ、目撃情報も上がっていない。 美南は真面目だから、きっと真っ当な理由以外で訪ねたことはないだろう。 三年の、あの雀が煙草の煙に、小さな小さな鳴き声を乗せていることも、きっと知らない。 紫歩は煙草が嫌いだ。母も、二人の父も煙草を吸わないから、鼻がまったく慣れない。 たまに気分を変えに遊びに行くと、先客として鎮座しているあの雀には嫌味をよく言われるし、言ってしまう。何もやましいことはしていないし、するつもりもないが、きっと美南は良い顔をしないだろう。 美術室に足繁く通うことも、それは中学からの習慣だと知っていても、どこか寂しげな顔をして話を聞く彼女だ。 下手に誤解を招いたり、傷つけてしまうなら、言いたくはなかった。 美南が思っているほど、紫歩は綺麗でも美しくも何ともない。世俗の欲に塗れた、ただの15歳だ。眩しそうに見つめられると、嬉しいのに、どこかで、この人が見ている間宮紫歩は本物なのか? と疑問に感じられてしまう。 「じゃあ、帰ろっか」 ようやく繋がれた手は、またとなく温かかった。 紫歩の不安を塗り替えるくらいに。 寒さゆえにゆっくりと歩く。秋冬用に厚手に変えたタイツでも、風が通ってゆく。スカート丈を長くしたら温かいのか、と思うが、自分のファッションの信条上、嫌だった。 隣の美南は寒がりではないのか、元気そうである。 ちらちら見ていると、視線に気づかれた。 「私の顔、何かついてる? 何か、今日のあなたはたくさん考えごとをしているみたいだけど」 「取り留めもないことよ」 「そうやって隠される方が、つらいんだよ? ねえ。私たちは付き合ってるんだから、さ。あなたが人に自分の気持ちを吐露するのが苦手なことは知ってるし、理解してるんだけど。やっぱり、ちゃんと言ってほしいな。時間がかかってもいいから」 「うん……」 「ごめん、私も結構、感情的で、一言に留めておくつもりが言葉をぶつけちゃうことがあるんだ。追い詰めたり、怖がらせたいわけじゃないんだけど、怒ってる、ように聞こえちゃうかな」 美南の家は目前で、家に入ってから話をしたらいいのに。 暗い中でも一番明るい電柱の下で、見つめ合う。 車も人も通らない閑静な住宅街。闇に溶け込む私とは違って、美南はクリーム色で、光の色をしている。 「それだけ言ってくれるのは、私のことが好きだからで」 「うん。あなたのことが、好きだよ。紫歩」 「ありがとう。一人きりの家に帰っても、あなたがいるから寂しくないの。この世界に、自分はたった一人じゃないと思えるから」 美南は、私の両手を握った。抱き締めるにも、万一窓から見られたら、ご家族に知られてしまうから、踏みとどまっている。 「そっか。良かった」 「たぶん、明日からいきなり、はっきり口にできるように、なんてはならないと思うわ。私が、頑張って、頑張ってやっと私が今どう思っているかを伝えられるようになる。時間はかかると思うの。癖、だし、生き方、だから。秘密がいっぱい、に思えるかもしれないし、不安にさせてしまうと思うけど、待っててほしい。美南のことは、本当に好きなの……あなたがいいから」 簡単に私は涙声になってしまう。簡単なことで泣く女なんて、嫌な奴なのに。 「うん……このままだと、紫歩が泣いちゃいそうだね。家、帰ろっか」 自分より背丈は小さな、一つ上の恋人に、手を握られて、柔らかな温もりに包まれたお家に招かれる。 紫歩はゆっくり目を閉じて、涙を引っ込めた。 ご家族に挨拶を済ませ、スマホのゲームやろ! と元気に声をかけてくる、美南の妹のつぐみの頭を優しく撫でる。 美南はきちんと、紫歩が泊りにくることを事前に伝えているから、椅子も用意されていて、一緒に出来たての料理をいただくことができる。 遠い昔は、こんな景色を毎日見ていた気がする。確かにあったような。 気を遣ってもらって、会話も弾む。時間は過ぎてゆく。 お風呂には先に入っていいよ、と言われ、自宅だったら一時間でも二時間でも楽しむところを三十分に留めてあがる。 美南はもう少し短い時間で部屋に戻ってくる。その間、スマホでファッションサイトをチェックしているだけで、なるべく夜のことは考えないようにしていた。 「あの、さ」 後は寝るだけ、だがベッドそばに座って暇つぶしにストレッチしている紫歩に美南が声をかけてくる。 「……美南?」 「伊織とは、その」 「ああ、伊織とは……褒められた関係じゃなかったわね」 一つ上の、美南と同い年の、紫歩とはまた違う病的に細い短髪の彼女。美南が振り向く日が来るとは知らず、彼女と不埒な遊びを−−生きるために、死なないために、互いの肌で心臓の音を聞きあったのは事実だった。伊織曰く、校内で抱き締め合っていたのを美南が目撃したことがあるらしいのも聞いている。 「私、ちゃんと紫歩の口から聞きたくて。過去の話だとはわかってるんだけど、さ」 じいっと美南の顔を見つめてしまう。考え込むと、相手を見てしまう。普通は、怖いと怒られるが、美南は視線をそらさない。 「ねえ、美南。伊織とは、途中まで、しかしてないの。途中までって言うと、変かもしれないけど。やっぱり、ちゃんと付き合った人のために最後は取っておこうって」 しばし沈黙が流れた。美南は美南で、考え込んでいるようだった。真向かいで、見慣れないおろし髪に、リラックスできるからか、いつもより幼く見える様子に、何を考えているのかはか読めない。 「教えてくれて、ありがとう。ごめんね、付き合ってない時の話なのに、詳しく話せ、なんて言っちゃって。でも、知りたかったんだ。紫歩のことだから」 美南が近づいてきて、ふわ、と抱き締められる。 紫歩はそれだけで泣きそうになった。 「ちゃんと話してくれたよね。私、嬉しい。紫歩が、自分のことをあんまり話さない紫歩が、ちゃんと、私をあなたの領域に許してくれたんだって思えるから」 耳元で囁かれ、身体がびくっと跳ねる。 今まで何度もハグもキスもしてきたが、雰囲気が違った。もっと、濃厚な何かがある。 「紫歩は、私と、したい?」 「……うん、もちろん」 「良かった。じゃあ、電気暗くするね?」 「……はい」 豆電球に照らされて、何度もキスをする。寒くないように、ベッドの中に招かれる。不慣れな美南の震える手が、紫歩の肌を揺らす。 溢れる涙は、至上の喜びゆえに流れてゆく。
https://w.atwiki.jp/lebekun/pages/89.html
曲名 闘う戦士たちへ愛を込めて 点数 76 備考 一時期有線などで流れていたのを耳にしていたら、気付けば虜になっていた。桑田さんの癖があまりなく聴きやすさ抜群。 関連ワード 76
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1306.html
――――彼方まで愛を込めて―――― そう君、今日はあなたの誕生日。 あなたがいなくなってから今年で17回目の、誕生日。 出会ってから数えるともう、何回目になるのかしら? 赤ん坊だったこなたも、もう18になったのよ? 時の流れは早いよね。 あなたにも見せてあげたいな、私達の大事な娘の姿を……。 ずっと小説家になることだけを志して必死に生きていた、そう君。私の大事な旦那様。 私は時に優しく、時に厳しくあの人を守ってきたつもりだ。 だけど、貧困な生活はそれなりに長く、食生活の貧しさからか、知らないうちに、そう君の身体は病に侵されていた。 19年前。大きな賞を貰って、出版が決まった。あの時のそう君のはしゃぎかたったらなかったよね? もう、本当に小さな子供みたいに飛び跳ねて。ふふふ、私も一緒になって飛び跳ねたんだけどね。 その年の内に私は赤ちゃんを授かって、何もかもが上手くいくと思ってた。 けれど、そう君の身体を蝕んでいた病魔は、私達の幸福を奪い去っていく。 それでも、そう君は必死になって小説を書いていた。 「俺は小説家だ。小説には印税ってのがある。お前達に迷惑をかけないためにも、 俺は腕を動かすことが出来なくなるまで、何本でも書き続ける」 春になって、柔らかな風と共にこなたはやってきた。 名前は、私の名前「かなた」と対を成すようにって、そう君が決めたんだよね。 同じ総合病院で家族そろって一緒に入院なんて、笑い話にもならないよね? だけど、それはそれでよかったのかもしれない。 そう君は自分の病室を抜け出して、私とこなたを毎日、抱きしめてくれた。 それからすぐに私とこなたは退院して、今度は私達二人がそう君を抱きしめるため、毎日病院へと通った。 家族三人が共に過ごしたのはそれからたったの1年間だけ。 こなたの身体の調子が悪いとき以外は必ず、お見舞いに行った。 辛くって、悲しくってどうしようもなかったけど、少しでもあなたと一緒にいたかったから。 春になってすぐに、そう君は還らぬ人となった。 お医者様の見立てでは予想されていた死期よりも1年以上存えたのだと言う。 ずっと分かっていたことだから、泣かないと思ってた。 覚悟していたから、泣かないように我慢した。 私達は、ほぼ駆け落ち同然でここまで来たよね。 私の両親はそう君の事を毛嫌いしていたから、とても話をする気にはなれなかった。 けれど、そう君は知らないうちに田舎のご両親に連絡を取ってくれていたらしく、その日の内にお義父さんが病院にやってきた。 お義父さんは何度も私に頭を下げて謝ってくれる。でも、別にお義父さんが悪いわけじゃない。不幸な女とも思われたくない。 少なくとも私にとって、そう君と過ごした時間はとても幸せだったよ。 その後、通夜や葬儀の話、今後の話。それから、実際の通夜とか、親戚への挨拶とか……。 正直、その辺は覚えてないのよね。ずっと、コップいっぱいに注いだ水のように、いつ零れてしまうかも分からない、そんな状態だったから……。 全てが終わって、何日かぶりに我が家へ帰った日のこと。 そこは、そう君との思い出がいっぱい染みこんでいて……。 ついにコップの水は溢れ出してしまった。 疲労や不安、そして悲しさや悔しさが綯い交ぜになって溢れてきたよ。 私は泣いた。一晩中、泣いた。こなたもつられて泣いた。 泣いてるこなたを抱きしめて、涙を流すことを止めた夜。 翌朝、気がつくと、こなたは私の頭を優しく撫でてくれていた。 私はそう君のためにも、きっとこの子を立派に育ててみせる。そう強く誓った。 生活自体はそう君のおかげで安定していたよ。そう君の出版したいくつかの小説の印税が主な収入源。 それに私のパートのお給料を足せば、こなたと二人、なんとか暮らしていけた。 そう君は二人で実家に戻れって言ってたよね? だから、怒られちゃうかもしれないけど、その時の私は誰にも頼りたくないと思ってたの。 天国で私達を見守ってくれてるはずのそう君に心配をかけたくなくて、一番不安な方法をとってしまった。 バカだね、私。 それから私は、アパートと保育園とパート先を行ったり来たりする日々がずっと続いた。 こなたはそう君によく似て、なんにでも興味を示す、好奇心旺盛な子だったの。 保育園の帰り道には、その日の出来事を一生懸命に話してくれるあの子が微笑ましくて、 それを見るだけで、辛さや悲しさはどこかに消えていった。 そう君譲りの泣き黒子も癒しの一つだったわね。 数年が経ち、こなたも小学生になった。 前と比べると、なんとなく笑顔が減った気がしたけど、とても強い子だなって思ったよ。 お父さんがいないことを寂しく思わず、強く育ってくれてた。 私はそれに安心したのもあるけど、大きくなっていろいろ入り用なものも増えたし、 パートの量を少しずつ増やしていった。 中学に入り、こう、個性が出てきたっていうのかな? 私としては不満だったけど、あなたと同じで、ゲームやアニメにハマり始めたみたい。 「みたい」っていうのは……。 その頃から、こなたと私は会話が減っていったから……。 笑顔を見ることも徐々に無くなっていった……。 こなたが3年生になった頃、ついに私達の間の会話は消滅した。 あの頃の私はいつもこなたの部屋を開けることが出来なかった。 毎日、毎日こなたに怯えながら生きていた。 無表情で無感動で何を考えているのか分からない。 できる限りのことはしたつもり。 パートが終わり、帰宅するのはいつも夜9時ごろ。 アパートの前で部屋を見上げると、ウチだけが真っ暗だった。 唯一、あの子の部屋のディスプレイだけがぼんやりと淡い光を外に放っていた。 私は、それを見るたびに深いため息を吐き出す。 「ただいま~。こなたー、今帰ったわよー」 「おかえり」の声は、いつも無い。 静まり返る部屋に私の声が吸い込まれていく。それがとてつもなく、悲しかった。 パート先で貰った、残り物の惣菜をおかずに、一人遅い晩御飯を食べる。 時折トイレに向かうこなたを見かける以外、何の接触もとることは無かった。 こなたが話してくれなかったことは寂しかった。 こなたが笑ってくれないことが悲しかった。 そう君がここにいないことが、何よりも辛かった。 そして、一眠りして朝を迎えれば、また同じ日常が始まる。 私は必死に働く、こなたを守るために。 お金が無くちゃ、生活できない。お金が無くちゃ、何も出来ない。 お金さえあれば、そう君は……。お金さえあれば……こんな思いする必要はなかったのに……。 ある日、パート中に体調を崩して急遽、帰宅したことがあった。 家に帰ると、カギが開いている。 不思議に思った私は玄関を恐る恐る開いて、中を確かめる。 すると、そこにはある筈のないこなたの靴が脱ぎ散らかしてあった。 正午を少し回ったくらいの時間。 本来なら学校にある筈のこなたの靴が目の前にある。 私はこの状況をしっかりと理解できないまま、自分の身体の調子も忘れてこなたの部屋へと走る。 「こなた!」 電気の消えた部屋はカーテンで閉め切られ、薄暗い。 その中にディスプレイの灯りで顔を照らされたこなたが、ぽつんと座っていた。 「なあに? おかあさん?」 「あなた……、学校は……?」 沈黙。カタカタとキーボードを叩き続けるこなた。 「つまんないから……、帰ってきたんだよ……」 気のない、感情のない返事。 うっすらと見える横顔には生気のかけらも無く、こちらに向く様子もない。 表情からは何も伝わってこない。 視線を下ろすことなく手だけがカタカタと音を立てて動いている。 私の中に何か分からない感情が生まれた。 いや、最初からそこにあったのだと思う。 それが、今、膨れ上がり、破裂した。 頭に血が上り、体温が上がる。吐き気に襲われ、汗がにじみ出る。 ――――パシーン パソコンとキーボードを叩く音が小さく流れる部屋の中に、大きな破裂音が響く。 私はその日、初めてこなたを、叩いた。 「痛いよ、おかあ……」 「なんで分かってくれないの!お母さんこんなにがんばってるじゃない!?」 頬に手を当て、言葉を言いかけた娘を遮り、私は続ける。 「お父さんがいなくて辛い思いもさせた。そのために私が働きに出て寂しい思いもさせた。 だけど、生活に不自由をさせたことは無いし、なんでも与えてあげたじゃない! あなたには立派に生きていって欲しいから、立派な大人になって欲しいから……。 だから、私こんなにがんばってるじゃない!なんで、分かってくれないのぉ!?」 私は思うままのことを吐き出し、その場に蹲った。 涙が溢れてくる。 自分の苦労が伝わらない悔しさ。 女手一つで育ててきた疲れ。 若さゆえに、遊びたい時もある。それさえも押し殺してきたストレス。 その全てが綯い交ぜになり、一気に押し寄せる。 醜かった。自分で自分の事が嫌になり、とてつもなく醜く感じた。 そう君、ねぇそう君!あなたは何で逝ってしまったの? なんで、私を残して、逝ってしまったの? 「ばか――――」 パソコンから漏れ出るファンモーターの音が耳に残る、この虚無的な空間に、こなたの声が響く。 はっとして顔を上げる私。 「ばか……、ばか……、ばか、ばか! お母さんのばかー!」 こなたが泣いてる。 ずっと、無表情で、何の感情も見せなかったこなたが、泣いてる……。 「私、一度でもお父さんが欲しいって言ったことあったかなぁ!? 私、一度でもお母さんにそんなわがまま、言ったことあったかなぁ?」 こなたは小さな肩を震わしながら、私に近づいてくる。 「ねぇ、お母さん。私は、私だよ? 泉こなただよ? お母さん、いつになったら私のこと見てくれるのさー!?」 ――――えっ!? 「ちゃんと見て、私を見てよ、おかあさん! 私はお父さんの替りじゃないんだよ!? 私はお母さんの子供なんだよ!? 泉こなたなんだよ!?」 小さいと思っていたその両手は、いつの間にか私と同じくらいの大きさになり、 掴まれてる肩に入れられた力も、もう子供のものじゃない。 この子はちゃんと育ってる。こなたは立派に育ってる。 なんで、気がつかなかったんだろう、そんなことに。 何の為に私はがんばっていたんだろう……。 私はいつ、この子を置き去りにしてしまったんだろう? そんな疑問と後悔が湧き上がり、再び涙が溢れ出す。 こなたの腕を払いのけて、今度は私が抱きしめる。 うん。育ってる。大きくなってる。 でも、まだまだ小さいこなた。こんなに小さいこなたは、こんなにたくさんの不安を抱えていた。 知らず知らずのうちに私が植えつけていった不安。 頬を寄せ合い、互いに嗚咽する。 涙と涙が混じりあう。それはとても暖かい。 あの人がいなくなってから14年間、感じたことの無かった暖かさ。 ごめんね、そう君。私、ダメな母親だったわ。 あなたがいなくちゃ何も出来ない、ダメな母親だわ。 でも……、でもね、そう君。 これからはきっと大丈夫。私にはこなたが、いるから。 あなたの残してくれた……ううん、あなたと私の大事な子供。こなたがいるから、大丈夫。 私達二人、きっとうまくやっていける。そうだよね?そう君。 「ごめんね」 ようやく出すことの出来た言葉はたったのそれだけ。 でも、こなたは何度も何度も頷き、私にしがみついていた。 その日、私はこなたと一緒に寝ることにした。 床に布団を敷き、枕を三つ並べて、真ん中にこなたをその横に私。 反対側は……言わなくても分かるよね。 こなたは初めて学校のことを話してくれた。 友達は少ないみたいだけど、決してさびしくは無いって。 学校をサボってよく先生に怒られるって。 でも、その先生は優しくしてくれるって。 そういえば、中学になってから一度も学校へ行ったことが無かった。 今度、お礼代わりにあいさつに行かなきゃ。 取り留めの無い話をしているうちに、こなたは私にしがみついたまま眠ってしまった。 私はこなたの為に生きていかなきゃ、こなたの為にがんばらなきゃ。 そう君じゃない。一人の人間として、私の大切な娘、泉こなたを守っていかなきゃ。 その為なら、助けてくれるよね、そう君―――― 「お母さん! 大根がぁー!」 「へ?」 こなたの声にびっくりして飛び起きる。 鍋を覗くとお湯は蒸発し、大根は絶体絶命のピンチ。 うそ!? いつの間に眠っちゃってたんだろう! 「あ、ああっ! どうしようっ!? み、みずーっ! こなた、みずちょうだーい!」 寸でのところで、大根は無事、救出された。 こなたは呆れ顔で、お母さんには任せられないって必死に仕上げをしている。 私は、テーブルに軟禁され、そう君の書いた本を開く。 台所に立つあの子を見てると、さっきまで考えていたことが嘘のように思えてくる。 いまだに、アニメやゲームは大好きだけど、家の中はいつも会話と笑顔で満ち溢れている。 こんなにも私を暖かくしてくれているのはこなたのおかげ。 そんなことを考えて、後姿を眺めていたら、こなたは急に振り返って、私に問いかけてきた。 「ねえ、お母さん。お父さんってどんな人だったの?」 私はその言葉に、心臓が飛び出るかと思うほど驚いた。 そうだった、この子には何も聞かせてなかった、そう君の事を……。 私は何も言わなかった。言うと、余計にこの子は寂しがってしまう、そう勝手に思い込んでいた。 それに、本人から聞いてくることも無かった。だから、なんとなく有耶無耶にしてしまっていた。 だけど、やっぱりそれは違うね。教えてあげなきゃいけないんだよね? ねぇ、そう君。そう君の事、何から話したらいいかな? 「私、お父さんが手羽大根を好きなこと以外、何も知らないのは、ちょっと寂しいよ~」 「ふふふ、そうねぇ~……」 こなたにそう君のことを話す前に、お誕生日おめでとう。 今年も、私とこなたの笑顔を受け取ってね。 了 エピローグ 「ねえ、こなた」 「ん? なあに? お母さん?」 食器を洗いながら頭だけでこちらを向く。 こちらに振り向いて、結い上げた髪の毛がふわりと揺れる。 「そんなに邪魔なら、切っちゃえばいいんじゃない?その髪」 人のこと、言えた義理じゃないんだけどね。 でも、あの子は何もいわず、ずっとあの髪型のまま。 私と同じ青い髪を、長く長く伸ばしてる。 「あはは、なんでだろうね?」 いたずらっぽい微笑をして、空いたほうの手で髪をくしゃくしゃと触ってみせる。 そしてまた、こなたは黙って洗い物を再開した。 「え?教えてくれないの?」 「あはは、教えないよ~」 「なによ、けちんぼ!」 「お、お母さん、それ、禁則事項……」 こなたが猫口で頬を掻く。私はそんな顔できないわ。 「……これはね、お母さんとずっと一緒にいられるおまじないだよ」 片づけを終え、タオルで手を拭くと、こなたが降りてくる。 頬を赤らめて、手を後ろに回した。 リボンを解くと、真っ青にきらめく長い髪が舞い散る花びらのように広がった。 恥ずかしいわね、そんな嬉しいこといきなり言うもんじゃないわ。 「それと……」 「え?まだあるの?」 ゆっくりとこなたが窓の外に視線を動かす。 私もつられてその方向を見つめる。 「お母さん、今、幸せ? お父さんいないけど、幸せだよね?」 「え? うん、そうね、幸せ、だね……」 「だから、伸ばすの……」 その瞬間、少しだけこなたが大人っぽく見えた。 親バカじゃなく、とってもきれいな横顔……。 「空の上からでも、私が分かりますように……。 いつか、お母さんとお父さんみたいな、素敵な出逢いに、巡りあえますように……」 こなたの横に立ち、肩を引き寄せる。 二人で窓の外を眺めながら、星を探す。 こつんと頭を寄せてくる、こなた。 此方から愛を込めて。届いていますか? そう君? 彼方まで愛を込めて。届いているよね? そう君―――― 終 コメントフォーム 名前 コメント 感動した。それだけ。 -- 名無しさん (2010-06-11 00 57 45) そうじろうさん‼ 2人は幸せに生きていますよ(/ _ ; ) -- ユウ (2010-04-13 02 17 40) とても、とても、すごくいいお話でした。 -- 空我 (2010-02-07 23 37 48) 良い話過ぎて、泣けた!他にいう事は、何もない! 文句あるか?! -- 名無しさん (2008-11-20 12 10 20) 途中すれ違い衝突しつつも最後には分かり合い、かなたとこなた2人の、温かな 母子関係を築いてゆく描写に、大変感動しました。 それにしてもこなた、かなたと2人の場合でもオタクになるんだ・・・。 -- 名無しさん (2008-10-18 09 21 59) 何つー…良い話だ…感動だ!! -- 名無しさん (2008-10-05 05 21 11) 綺麗な話ですっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ありがとうございます!! -- 名無しさん (2008-05-09 19 44 01) すごく良い話でした! こんな作品をみれたことに感謝! -- 名無しさん (2008-04-02 11 10 31)
https://w.atwiki.jp/ercr/pages/10.html
発売日 2020年10月30日 ブランド GLOVETY タグ 2020年10月ゲーム 2020年ゲーム GLOVETY キャスト 月野きいろ(有村ロミ),桜木ひな(坂下唯々菜),佐本二厘(新田忍),風音(西野佳純),歩サラ(片桐猛),佐久間春奈(星まりす),北大路ゆき(Σ),朝野ヒカリ(郷田慎二),杏花(愛内周太(過去)) エイドリアン実篤,寺門亜斗夢,天竺真,春咲実季,妃依恋,ぽんぽんやまだ,三折小牧 スタッフ 企画/脚本:新島夕 原画:きみしま青 アートディレクター:志水マサトシ BGM:水月陵 歌曲/サウンド協力:竹下智博 音響協力:桜城ちか デザイン協力:有限会社ツインクル,朝倉はやて SD原画:こもわた遙華 グラフィック:犬山うめきち,桐都,shiroko,神山,朝倉はやて グラフィックアシスタント:おとぎ遊戯,柴月けい スクリプト:uta(VISUAL ARTS),kazuT,新島夕 WEB:水無月 ムービー:どせい 販売:VISUAL ARTS 制作:GLOVETY 楽曲 オープニングテーマ 「新世界のα」 作詞:新島夕 作曲:竹下智博 Vocal:Luna エンディングテーマ 「願い星」 作詞:Duca 作曲:竹下智博 Vocal:Luna セカンドオープニングテーマ 「Answer」 作詞:新島夕 作曲:竹下智博 Vocal:Duca グランドエンディングテーマ 「新世界のα」(male ver) 作詞:新島夕 作曲:竹下智博 Vocal:ひょん
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/4076.html
このページはこちらに移転しました 屍より愛をこめて 作詞/109スレ229 カビ臭いフロアは 今日も涙の雨が降る 永遠の悲しみ 涸れる事なく雨が降る お互いに忘れましょう 事切れた傀儡(かいらい) 爪弾いた糸手繰り 高貴なる潰乱(かいらん) 離れない結び目 私の愛は増すばかり いつまでも待ってます 身体朽ちても滅びても 「行かないで…」